Aug 18, 2009

都市計画の観点からマニフェストを読む:比較考察編

 一連の党別の整理を踏まえて、比較考察をしたい…ところなのであるが、先の住宅政策の場合とは異なり、残念ながら比較表がつくれるほどの内容は掲載されていない。
 それでも、一定の記述がみられた、自民党・公明党・民主党の特徴をまとめれば、次のようになるだろうか。
  • 自民党: 現行制度はそのまま、地域が取り組みやすい環境を整備。
  • 公明党: 地域で実践中の取り組みを、事業制度や補助等で支援。
  • 民主党: 現行制度を抜本改正し、地域主権の都市計画を実現。
 自民党のマニフェストには記載があまりないので(ということは現行のままでよいということか)判断がつきにくいが、公明党は個別の実践レベルを推進、民主党は仕組みそのものを改変、という点が大きく違うといえよう。とはいえ、公明・民主どちらの場合も、都市計画に主体的に取り組むのは自治体であり地域であるという部分は、基本的には共通しているようにみえる。

 両者の特徴をこのように捉えた上で考察すれば、公明党の場合には、地方分権も合わせて主張しているから、個々の地域で先進的な活動に取り組んでいる自治体にとっては、ある程度やりやすい環境になるのかもしれない。権利が与えられて、かつ国が活動を後押ししているのであるから。
 しかし、このような場合には、意識の高い自治体は積極的に取り組むが、意識の低い自治体は動かないという状況も生じかねないのではないか。となれば、都市間の格差はある意味で広がることになろう。元気な自治体のまちは良いものとなるが、元気がない自治体のまちは衰退するという状況も考えられる。
 そうなった時には、広域的な観点からどのような都市計画的な対応を行うか、ということも問われることになろう。衰退するまちはそれでも仕方がない、元気なところへ重点的に支援するという姿勢をとり続けるのであれば、結果的にマニフェストで主張している「コンパクトシティ」が実現する、ということなのかもしれないが。

 一方、民主党の場合には、「抜本改正」される制度がどのようなものであるのか想像がつかないため、先の状況は考えにくい。しかし、複数の法を整理統合して体系そのものを変えるのであるから、その作業には大変な労力が必要と思われ、また時間もかかるものと想定される。仮に官僚がその方向性に反対した場合でも、それだけのことをやれるだけの能力・力量があるのかが、問われることになろう。中途半端なやり方をした場合には、現行制度よりも混乱する危険性も想定されるのであるから。
 また、制度が抜本された場合に、これまでの体系に慣れていた現場レベルの自治体職員や専門家、企業などがどれだけ対応しうるかも問題であろう。制度が変更されるまでに数年、それを現場レベルで理解するのに数年、きちんと使いこなせるようになるまでさらに数年…などとなると、かなりの混乱も生じそうであり、またこの先しばらくは都市計画が「動かない」可能性も考えられるのではないか。
 そのあたり、継続的に動かしつつ、適切な形で抜本的に改正し、その成果が現場レベルでも活用出来るようにする、というのは、かなりの難題になりそうである。

 現在政府では都市計画法の抜本的(と言われる)改正に向けた作業を行っているわけだが、各政党のマニフェストをみると、政権政党がどこになるかで、上記改正の方向性も大きく変わりそうである。今回の改正は数十年に一度の大きなものと言われ、これまでの方向性が大きく転換されるとも言われている。
 そのようなタイミングで政権交代が起こるかもしれないのであり、結果如何でそれこそ今後の都市計画のあり方が左右されることにもなろう。8月30日にどのような選択がなされ、その結果として都市計画はどこに向かうのか、注目していきたい。

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都市計画の観点からマニフェストを読む:その他政党編

 政党別の最後として、自民・公明・民主以外の、その他の政党をまとめて。
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■共産党
 「総選挙政策」の中で、都市計画に関連するものとしては、次の事項くらいである。

○都市農業、中山間地農業にたいする支援を強化します(23ページ)
 都市の環境に果たす農地の役割と農業への参加の意欲に応えるため、都市計画制度での位置づけを強化し、農地への相続税・固定資産税を、維持可能な水準に引き下げます。当面、生産緑地の指定を拡大し、相続税猶予の条件を緩和します。期限切れとなる条件不利な中山間地農業への直接支払い制度を継続し、指定の条件を緩和します。

 残念ながらこれだけであり、かつ農地の話であって本質ではない。これでは考察することも出来ない。

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■社民党
 「マニフェスト」の内容で、関係あるものを(若干無理矢理)挙げても、この程度である。都市計画はほとんど忘れられているかのようである。

再建5 地域  元気でゆたかな地域へ
6.地域のバス・鉄道などの公共交通への支援を充実します。
再建7 みどり  地球温暖化ストップ
9.すべての開発に対し、生物多様性の保全を義務づけます。水基本法を制定します。
10.情報公開や住民参加の徹底で、無駄なダムや道路などの公共事業を徹底的に見直し、乱開発を見直します。

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■国民新党
 「政権政策」から関係あるものを(若干無理矢理)挙げても、この程度に過ぎない。

7.地方再生
真に必要な公共投資や災害対策を早急に復活し、安心安全な地域づくりを進めます。


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都市計画の観点からマニフェストを読む:民主党編

 自民党・公明党に引き続き、今度は民主党について。
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■民主党
 「マニフェスト」の政策各論の項で、都市計画に関連するものとしては、以下の内容が挙げられる。

44.環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する
○住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する。
・建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化等、必要な予算を地方自治体に一括交付する。
48.災害や犯罪から国民を守る
・大規模災害時等の被災者の迅速救済・被害拡大防止・都市機能維持のために、危機管理庁(仮称)を設置するなど危機管理体制を強化する。

 どちらも直接は関係しないが、「建築基準法などの関連法令の抜本的見直し」には、後述するように都市計画法なども含まれており、ここが都市計画的な観点からはポイントといえよう。
 また、まちづくりに関連する事項としては、

34.市民が公益を担う社会を実現する
○特定非営利活動法人をはじめとする非営利セクター(NPOセクター)の活動を支援する。
・認定NPO法人制度を見直し、寄付税制を拡充するとともに、認定手続きの簡素化・審査期間の短縮などを行う。

という内容もみられる。NPOの話は自民党・公明党でもみられたが、「市民が公益を担う社会」と書くあたりが、この党の独自性といえるだろうか。

 「政策集」には多数の項目が挙がっているが、その中で都市計画やまちづくりに関連が深いと思われる事項を挙げてみる。

○災害対策(2ページ)
 被害を減らすため、既存不適格住宅の耐震改修を進めます。さらにゲリラ豪雨や都市における河川氾濫など、新しいタイプの災害への対策を強化します。
○地域主権の確立(7ページ)
 大都市制度のあり方を検討する一方で、住民と行政との距離を縮めるため、政令指定都市の区や合併前の市町村などを単位とし、一定の権限を持った自治区を設けられるようにします。
○住民自らによるガバナンス形態の決定(8ページ)
 地域のことを地域で決める地域主権を確立するため、法律等の画一的な縛りを極力撤廃して、シティマネージャー制度の導入、地方議会定数や地方議会議員の任期の変更など、地方が独自の判断で自治体や議会の仕組みを決められるようにします。
○コミュニティの再生・強化(13ページ)
 住民が単に公的サービスの受け手となるだけでなく、公共サービスの提供者・立案者といった自治の担い手として参画する社会を目指します。特に、地域で行われている高齢者宅の見回りなど、地域住民同士が互助互恵の精神で行う奉仕活動を促進し、過疎地などのコミュニティを再生・強化します。
○登記所の地図整備を推進(14ページ)
 地図整備についての国の責任を明確にし、筆界特定手続きの職権開始制度の導入など正確な登記所備付地図の整備を加速します。
○農地制度の改革(35ページ)
 農地について、一筆毎に規制する方式からゾーニング規制(地域別規制)の方式を基本とする制度に転換します。さらに、地域住民参加型による農業的土地利用(農業振興地域整備法)と非農業的土地利用(都市計画法)とを一体化した総合的な「都市・農村地域土地利用計画制度(仮称)」を創設します。
○中心市街地・商店街の活性化(38ページ)
 地域コミュニティ再生のため、商店街の活性化を支援します。1階に商店街、2階以上を高齢者向けケア付き賃貸住宅とする複合建築物の建設などにより、「商住一体のまちづくり」を進めます。託児所や駐車場・駐輪場等を整備し、消費者が気軽に商店街に出かけられる環境を整備します。起業家のためのSOHO(在宅勤務の小規模オフィス)への活用や行政窓口設置により、空き店舗や空き地の利用を進めます。後継者不足に苦しむ商店街の新たな担い手育成を支援します。
 都市景観の向上、防災施設や情報通信基盤の整備、電線の地中化等を促進し、バリアフリーで美しい商店街をつくります。
○地方の特性を生かした国土政策(39ページ)
 農山漁村は、超高齢化と若年労働者の流出が進み、過疎化による地域コミュニティの崩壊や農地・林地などの国土荒廃が進行しています。水源確保や土砂流出防止などの国土環境の保全機能、伝統文化や自然との共生等の文化・レジャー機能の充実など、多種多様な機能を生かすための支援策を展開します。
 都市部では、密集市街地の形成や交通渋滞の発生など負の遺産が解消されていません。中心市街地の空洞化問題への対策、一極集中下での大規模地震など激甚災害のリスクの解消を重点とします。
○地域活性化に立脚した観光政策(40ページ)
 総合的な交通体系と景観に配慮した街や交通施設の整備を進め、国内外からの観光客の視点に立った観光政策を推進します。
○人にやさしい地域主権のまちづくり(40ページ)
 これからは画一的なまちづくりではなく、自治体への大幅な権限と財源の移譲を前提に、それぞれの基礎自治体が街の特性を活かしたまちづくりを推進できるようにします。
 道路や施設などインフラ整備のハードづくりと、土地の名産品や祭りなどコミュニティを盛り上げるソフトづくりを最適に組み合わせ、住民・NPO参加による行政等の運営を行い、「人の温かさが感じられるまちづくり」を進めます。
 新たな発展を続ける大都市と、商店街の空洞化や人口の過疎化、社会基盤整備の衰退などに直面する地域との格差拡大の解消に努めます。
 現在の法体系を抜本的に見直し、建築基準法を単体規制に特化、大胆な地方分権を前提として都市計画法をあまねくすべての地域を対象とする「まちづくり法」に再編、景観・まちづくりの基本原則を明記した「景観・まちづくり基本法」を制定することなどにより、コミュニティと美しく活気あるまちの再生・保全を図ります。
○高齢化など社会環境に対応したまちづくり(40ページ)
 高齢化社会、人口減少社会等に配慮したまちづくりを進めます。移動制約者の自立と社会参加の促進のため、引き続きバリアフリー社会の実現を目指します。
○交通基本法の制定(41ページ)
 「交通基本法」を制定し、国民の「移動の権利」を保障し、新時代にふさわしい総合交通体系を確立します。その内容は、…④都道府県・市町村が策定する地域交通計画によって地域住民のニーズに合致した次世代型路面電車システム(LRT)やコミュニティバスなどの整備を推進する――等です。
○環境影響評価(環境アセスメント)制度の拡充(45ページ)
 環境アセスメント法を改正し、対象事業の範囲の拡大・評価項目の追加、情報公開と市民参加の機会の拡充などを実現します。また、自治体による市民参加の機会の拡充を支援します。全事業に対する国レベルでの戦略的環境アセスメント制度(SEA)の導入をめざします。
○循環と共生のまちづくり(49ページ)
 環境負荷の少ない持続可能な社会を目指すための原則を明記するとともに、情報公開と市民参加を徹底した地域主権型のまちづくりのシステムを、都市計画法や建築基準法を抜本改正することによって構築します。また、省エネルギーのための屋上緑化と美しい都市景観をつくる「都市緑化法(仮称)」の検討を進めます。

 と大変盛りだくさんなのだが、どこかで読んだことのあるような文章にも見えてくる。住宅政策のまとめでも感じたことだが、近年にこの分野の研究者が主張してきたことに大変近いのである。民主党の政策をまとめるにあたっては、ブレーンとなった研究者がいるか、あるいは研究者の書いたものを整理したのか、どちらかではないかとも思えてくる。研究者的な文章という意味では、現在自治体が取り組んでいる内容を並べたかのような公明党のものと比べると、読んでいて分かりやすいし、論理が通っているようにもみえる。
 ただし、随所で「抜本的」と書かれているように、現在の制度をかなり大幅に変えることが主張されており、これが本当に実現出来るかどうか、またこの提案のように改正して本当にうまくいくのかは、注意深く検討される必要があるだろう。法制度の部分だけをみても、現在の「建築基準法」「都市計画法」「農業振興地域整備法」を“ガラガラポン”して、「新建築基準法(単体のみ)」に、「まちづくり法」と「景観・まちづくり基本法」、「都市緑化法」と「都市・農村地域土地利用計画制度」にするというが、いったいどのような形になるのかは見当もつかない。

 個人的には、この提案内容には若干疑問を抱かざるを得ない。最大の疑問は、このような制度を、「まちづくり」という言葉で受けてよいのかということ。まちづくりはむしろ空間=ハード以外の、行動=ソフトも含む概念であるから、空間を対象とする法制度には、この言葉を使うべきではないのではないか。都市と農村を一体的に扱うというならば、「都市・農村計画法」とかでよいはずである。その意味では、「景観・まちづくり基本法」にも違和感を感じる。景観は基本的には空間の話だからである。
 逆に、もしもこの法律の中に、ソフトも含む広義の「まちづくり」も含めてしまおうとしているのならば、それについても違和感がある。今やまちづくりは「都市計画」という範疇を超えた大きな概念なのであって、それを都市計画的なものの中に“回収”してしまおうとするのは、どこかおかしいのではないか。

 などということを考えてみても、総論として主張していることはわかるが、各論としては疑問も持ってしまう部分が多い。まあ、自民党や公明党のように、(都市計画に関する)総論がみえにくいものよりは良いとは思うが。

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都市計画の観点からマニフェストを読む:公明党編

 自民党編に引き続き、連立政権を組む公明党について。
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■公明党
 「中長期ビジョン」の中で、都市計画に関連するものとしては、以下の内容がある。

<防災・治安の確保>(3ページ)
 建物の耐震化や防災・減災対策が進み、集中豪雨や大規模地震など自然災害にも対応できる社会資本ストックが整備される。

 具体的にどのような形でやるのかは見えないため、あくまでも単体(建物)レベルの対応なのか、それとも地域としての防災力の向上なのかは分からないのであるが、後半部分は地域レベルとも読めるだろう。

 「重点政策」においては、特に都市計画に関連する事項はみられない。地方分権に関する内容の、「国・道州・基礎自治体の3層構造で、道州に自治立法権・課税自主権を最大限付与」などが行われれば、当然ながら都市計画についても「自治立法権」が付与され、道州単位での都市計画制度が可能になるのであろうが。

 多数の項目が並ぶ「選挙公約」では、関連した事項が結構みられる。主だったものを挙げてみよう。

○子供の安全を確保(35ページ)
 凶悪犯罪から子どもや市民を守るため、全国で活動する防犯ボランティア団体(約4万団体)による「犯罪に強いまちづくり」への自発的な取り組みや防犯意識の向上を図る活動に、国や自治体が積極的に支援することを責務とする「地域安全安心まちづくり推進法」を制定します。
○地域コミュニティーを担う商店街を応援(54ページ)
 地域コミュニティーの再生や地域経済の振興を図るため、中小小売商業振興法や地域商店街活性化法、中心市街地活性化法などの関係法制を抜本的に見直し、ソフト・ハード両面にわたる商店街ならびに中小小売商業者への総合的な支援の拡充を図ります。
 地域コミュニティーを担う中核的存在である商店街支援のため、低炭素社会や安心・安全、少子高齢化などの地域社会の課題に対応する商店街の取り組みを支援する中小商業再生事業予算の確保と増額を図ります。
 空き店舗対策などの商店街整備事業に取り組む商店街振興組合等に土地を譲渡した場合における特別控除の適用要件の緩和を図ります。
 空き店舗を活用した地域物産展開催、子育て支援施設の設置など地域住民の役に立つ取り組み支援など、商店街を地域コミュニティーの顔として住民が憩える場所に活性化します。
○中山間地域や都市部の農業への支援(62ページ)
 都市にあって多面的な機能を担う都市農業が持続可能なものとなるよう、都市農地に対する相続税の納税猶予制度を維持しつつ、都市農地の保全を含めた都市政策全体の国のビジョンを策定します。
○新たな交通総合システムを構築(64ページ)
 道路に対する国民ニーズの多様化を踏まえ、コンパクトシティの推進などまちづくりとともに、自動車中心の道路の在り方を転換し、歩行者や自転車が安全・快適に通行できるよう、既存道路の歩行者専用道路への転換、トランジットモール(一般車両を制限して歩行者・自転車・公共交通機関に開放された道路)等の新しい専用道路概念の導入など生活に密着した人間重視の道路整備を推進します。
○都市再生、コンパクトシティの推進(65ページ)
 都市基盤のインフラ整備はもとより、地域の特性を生かしたソフト面の整備を支援する体制の整備を行います。優良な民間都市開発を支援するため、民間資金やノウハウを活用して都市再生・地域活性化関連施策を推進します。政府系金融機関ならびに民間都市開発推進機構による資金繰り支援を実施し、事業の活性化を促します。
 医・職・住・遊など日常生活の諸機能を集約したコンパクトシティの推進で、歩いて暮らせる安心で快適な生活圏の形成と低炭素化を図ります。
 歩行者、自転車、自動車の安全な通行環境を確保するため、道路空間の再配分等により自転車専用の走行空間を新たに 1,000 路線で整備するともに、駐輪場の整備を図るなど快適な自転車利用の普及に努めます。
 市街地幹線道路、歴史的町並保全地区、 観光地などの無電柱化事業 (10年間で 2.2万㎞、残り約 1.9万㎞)を実現します。併せて沿道の植樹を進めます。
○耐震化を加速(66ページ)
 2020 年までに全国の密集市街地で救急車・消防車の進入可能な暫定進入路確保事業を完了させるとともに、同地域のリノベーション(既存建物を大規模改装し耐震性や省エネ性能などの用途や機能を高度化し建築物に新しい価値を加えること)を加速化します。
○環境保全型事業の推進(67ページ)
 地下水・下水再生水・雨水など眠っている水源を活用して、緑地の拡大や公園の整備、散水などヒートアイランド対策をはじめとした「水と緑のネットワーク」の保全・再生・創出のための施策を推進します。
○省エネ住宅や省エネ建築の整備促進
 屋上緑化、電線地中化後の樹木設置などによる都市基盤整備の推進により景観と低炭素社会の基盤整備を進めます。
○省エネ交通システムの整備促進
 ヒートアイランド対策とゲリラ豪雨対策の一環として、透水性・保水性に優れた自然土舗装材や廃コンクリートからリサイクルしたブロック材と緑化による「エコ歩道」や「エコパーキング」を整備します。

 と多数挙がっており、「安全安心」「商店街活性化」「都市再生」「コンパクトシティ」「ヒートアイランド」など、今日的なテーマが取り上げられている。このようにみれば、都市計画・都市問題への関心は(少なくとも自民党に比べれば)高い。

 だが、逆の観点からみれば、上記のテーマはまさに現在取り組みが行われているものであり、「今日的」な動きを並べているに過ぎないともいえるだろう。その意味では、次の新しい方向性を示したマニフェストとはなってはおらず、またどの部分に重点的に取り組むのか、政策の優先順位も今一つ見えにくいともいえる。

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都市計画の観点からマニフェストを読む:自民党編

 先に「住宅政策の観点から」を書いて以降すっかり間が空いてしまったが、引き続いて「都市計画」の観点からマニフェストを読んでみたい。
 なお、ここでは都市計画というのは、若干限定的に捉える。道路等の広域的なインフラの話は若干見方が異なってくるので、扱わないものとする。農地の問題も都市計画的な課題ではあり、また地方分権も都市計画にとって重要な部分なのであるが、具体的に都市計画に関する事項以外は扱わない。よって、都市計画制度や都市開発といったあたりが対象になるといえるだろう。
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■自民党
 「要約版」の方には、道路の話はあるが、都市計画に関する事項は載っていない。

 「政策バンク」では、いくつか関係する事項がみられる。以下、引用してみよう。

□商店街活性化(26ページ)
 空き店舗の活用や駐車場整備等、商店街再生に向けた意欲的な取組みに対する支援を行い、駅前や中心市街地等の賑わいを取り戻す。
□観光地の活性化(27ページ)
 無電柱化の集中実施や景観に配慮したまちづくりなどによる魅力ある観光地の整備…等により、観光を通じた地域活性化を進める。
□必要な社会資本の前倒しによる「未来への投資」の実施(27ページ)
 …PFI法を改正し、地域の活性化等を行う。
□農山漁村の保全と発展可能性の実現(28ページ)
 洪水防止機能や景観、文化創造を含めた農山漁村の多面的機能を維持していくため、国としての支援を充実する。
□独立行政法人改革(31-32ページ)
 一昨年決定した「独立行政法人整理合理化計画」のいて検討事項になっている…都市再生機構(UR)」…のあり方についても早急に結論を出す。

 若干広めに関係するものをとりあげたが、地域振興などの観点の方が強く、都市計画に直接的に結びつくという感じではない。都市再生機構については、都市開発の担い手がどうなるのかという点で重要ではあるが、行政改革の観点からである。

 これに対して、先に扱わないとした、道路や農地の話、災害の話や、地方分権の話は結構書かれている。また、まちづくりの観点というか、地域のマネジメントに関係する点では、以下のような内容が挙げられている。

□地域で活動する団体やNPO法人の育成・支援(27ページ)
 誰もが参加しやすい社会活動・NPO法人等ボランティア組織の育成・支援を行う。弱体化した地域の絆を再生するため、「コミュニティ活動基本法」を速やかに制定し、町内会や自治会、消防団などの地域に根ざした活動を行う団体を支援する。

 とみれば、都市計画の問題は主要な関心事とはされておらず、基本的には地方への分権を進め、また地域の活動を支援することで、「地域レベル」での取り組みを促す、「地域レベル」にまかせるということなのだろう。
 しかし、道路や農地などの国家的・広域的な問題は積極的に扱っているのだから、都市計画におけるいわゆる「広域」と「狭域」の問題が、どこまで考えられているかは疑問を持たざるを得ない。そのあたりを調整するための都市計画的な仕組みについてのビジョンは、少なくともこのマニフェストからはみえてこないのである。
 現在政府では都市計画法の抜本的(と言われる)改正に向けた作業を行っており、少なくとも都市計画分野ではこの動きは非常に重要視されている。だというのに、現在の政権与党がこの問題にマニフェストでほとんど触れていないというのは、やはり都市計画への関心は薄いのだろうか。

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Aug 03, 2009

住宅政策の観点からマニフェストを読む:比較考察編

 一連の党別の整理を踏まえて、比較考察をしてみたい。なお、ここでは住宅政策に関して一定の記述がみられる、自民党公明党民主党の3つを対象とする。

 これらの政党のマニフェストにみられる住宅政策の内容を、対象となる住宅の種別で整理すると、おおよそ次表のようにまとめられるだろうか。

  自民党 公明党 民主党
新築住宅 住宅ローン控除等による取得支援、減税による省エネ化の推進、住宅の長寿命化 住宅ローンの拡充・返済条件緩和、ノンリコースローンの構築、紛争処理機関の設置 長寿命・耐震・断熱・バリアフリー化のための減税、ノンリコースローンの整備
中古住宅 リフォーム・住み替えの支援 リフォーム推進・中古市場活性化のための融資・保険・ホームドクター・履歴情報整備、転貸による住み替え支援、リバースモーゲージの普及 リフォーム・改築の重視、ホームインスペクターの育成、施工記録の添付、リバースモーゲージの整備
民間賃貸住宅 子育て・高齢世帯向けの支援付住宅の供給 高齢者・障害者向けケア付住宅の供給、紛争防止等による市場整備 多様な賃貸住宅の整備、社会的弱者でも住める住宅の整備、家賃補助や所得控除などの税制支援
公的住宅 (記載なし) 借り上げ・PFI・民間委託等による整備、バリアフリー化、福祉拠点の整備、家賃減額措置の拡充 セーフティネットとしての活用
その他セーフティネット 住居のない方への住宅と生活の支援 再就職支援付き住宅手当の拡充 「住まいと仕事の確保法」による若者支援

 このようにみると、各党とも、「新築住宅」における性能の向上、「中古住宅」におけるリフォームの推進、「民間賃貸住宅」における高齢者向けケア付住宅の供給、という部分では基本的に共通したものを持った上で、自民党と公明党の違いは「公的住宅」の重視度合い、自民党と民主党の違いは「賃貸住宅」の重視度合いによるものといえよう。公明党と民主党の間では、「セーフティネット」の重視は共通しているが、その実現方策として「公的住宅」を中心とするか、「民間賃貸住宅」を中心とするかが違っているようにみえる。
 となれば、各党の住宅政策の特徴は、次のようにまとめられるのではないだろうか。

  • 自民党: 市場を通じた持ち家住宅ストックの整備
  • 公明党: 公的主体による住宅弱者へのセーフティネット
  • 民主党: 賃貸住宅の重視による住宅の多様化推進

 こう捉えた上で、総選挙後の住宅政策の行方を考えてみると、「新築住宅」「中古住宅」という主流となる持ち家部分に関する政策は実のところそう変わらないと思われるが、民主党に政権が変わった場合、自公連立政権が継続した場合のいずれにせよ、「セーフティネット」をより重視する方向に政策が変わることが考えられるだろう。その際の方向性として、民主党の場合は(ある意味自民党的な)市場重視の方向で実現しようとし、公明党の場合には政府の役割が再度位置づけられることになるのではないか。もしも民主党と公明党の連立というものが実現したとしたら、マニフェストの住宅政策をこのように読む限りでは、両者の志向する方向はおおよそ一致していると言えるから、「セーフティネット」を拡充する方向へとぐっと舵が切られるようにも思われるのである。

 もちろん、マニフェストに書かれたことが実際に実現されるというわけではないし、ここで扱った住宅政策が他の政策との関係で後回しにされる可能性もあるわけだがで、一つの思考実験の結果としては、ここで考察したような方向に進むことも考えられるのではないか。

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住宅政策の観点からマニフェストを読む:その他政党編

 「住宅政策の観点からマニフェストを読む」、自民党公明党民主党以外の、その他の政党について。これらの政党は住宅政策に関する記述が少なかったため、まとめて記載する。
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■共産党
 「総選挙政策」として出されており、この中で住宅に関する項目としては、次のものがある。

○待ったなしの耐震化工事にただちに取り組む(21ページ)
 耐震性が不十分な公共施設7万棟、公営住宅7万戸の耐震工事などに直ちに取り組みます。
○波及効果の高い住宅リフォームへの助成を増やす(21ページ)
 各地の自治体が実施している住宅リフォームへの助成制度は、助成予算の20倍を超える波及効果を生んでいます。住宅リフォームへの支援を抜本的に拡充します。中小建設業者への著しい負担となっている「住宅瑕疵担保保証制度」の改善をはかります。
○新規就農者への就業支援を強化する(22ページ)
 都会から移り住んで就農することを望む人のための住宅提供などの支援や、農林漁業の技術・経営を身につけるための教育・研究機関の強化、就業しようとする人のための農地、船などの確保に国の支援をすすめます。
○中小企業、住宅、福祉・医療施設などへの資金供給(26ページ)
 これらの分野の資金供給は、民間銀行などの「市場まかせ」ではなく、公的金融による支えが必要不可欠です。こうした公的金融の原資として、郵貯・簡保資金を活用します。

 数が少ないので、他党に比べて若干広めに抜き出したのだが、それでもこれだけである。この内容は、現政権の政策とそう変わるものとは言えず、住宅政策における共産党の独自色というものは感じられない。民主党が揚げる「持ち家主義からの脱却」や、公明党の「住宅セーフティネットの拡充」という内容が入っていてもしかるべきだと思うのだが、そのような具体の提案はみられない。
 上述のような他党の揚げる論点は、共産党にとってはある意味“当然”なのかもしれないが、少なくともこのマニフェストをみる限りでは、住宅の問題を争点とはしていないようにみられるのである。

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■社民党
 「マニフェスト」は、概要版・第一次案とされており、具体的な内容はあまり書かれていない。住宅という言葉が出てくるのは、以下の2つだけであり、住宅に直接関わるのは後者のみである。具体的内容は分からないため、これ以上の考察も出来ないが、少なくとも重要な論点とはされていないのだと、言うことが出来よう。

○再建1 はたらく 働く者の使い捨てを許さない
9.雇用、生活保護、医療、住宅の総合相談・支援窓口を各自治体に作ります。
○再建2 いのち  セーフティネットを充実
10.国民の「住む権利」を保障します。公共賃貸住宅を増やすとともに、家賃補助を充実します。

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■国民新党
 「政権政策」は、自民党の「要約版」に近いパンフレットの形であり、項目が並ぶだけで具体的な内容は書かれていない。その中で、住宅に関係しているのは、以下の1項目だけである。こちらについても、重要な論点とはされていないと言わざるを得ない。

2.経済・雇用対策
 労働者派遣法を改正し、雇用の安定を図ります。また、失業等により住宅ローンの返済が出来なくなっている人に、最長3年の支払い猶予制度を新設します。

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住宅政策の観点からマニフェストを読む:民主党編

 「住宅政策の観点からマニフェストを読む」の3つ目として、自民党公明党に代わって政権を担う可能性も高いといわれる民主党について。
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■民主党
 こちらの「マニフェスト」は自民党版よりも詳しく書かれており、住宅政策についても触れられている。「5.雇用・経済」の各論、21ページに「44.環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する」との項が立てられており、政策目的を「住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する」としている。具体策としては、以下の内容が挙げられている。

○リフォームを最重点に位置づけ、バリアフリー改修、耐震補強改修、太陽光パネルや断熱材設置などの省エネルギー改修工事を支援する。
○建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化等、必要な予算を地方自治体に一括交付する。
○正しく鑑定できる人(ホームインスペクター)の育成、施工現場記録の取引時の添付を推進する。
○多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する。
○定期借家制度の普及を推進する。ノンリコース(不遡及)型ローンの普及を促進する。土地の価値のみでなされているリバースモーゲージ(住宅担保貸付)を利用しやすくする。
○木材住宅産業を「地域資源活用型産業」の柱とし、推進する。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成する。

 「転換」すると言うわりには現政府の住宅政策のままの内容もあるが(項目の1,3,6番目)、その他では一定の独自性がみられよう。基準法の抜本改正と自治体への権限移譲、賃貸住宅の重視と家賃補助の創設、ノンリコースローンやリバースモーゲージの普及など、このあたりは研究者や学会が近年主張している内容に近い。おそらくそういう意見を取り入れたのだと思われる。

 より詳しい政策を列記した「政策集」でも、住宅関係は多数挙げられている(そもそも項目が膨大であるのだが)。特徴的な部分を中心に抜き出すと、次のような内容が見られる。

○住宅ローン減税等(19ページ)
 住宅ローン減税については、いたずらに最大控除可能額を拡大するのではなく、バリアフリー化や省エネなどの社会ニーズの高い分野に対して重点的な負担軽減策を講じます。また、自らの資金で住宅を新改築・購入した場合でも、住宅ローン減税と同程度の負担軽減を受けることができる制度(投資減税)を創設し、団塊世代などの建て替えやリフォームのニーズに応えます。
○ホームレス自立支援(29ページ)
 生活保護制度に依存することなく、公営住宅等の活用による住居の確保、NPO等による就労機会の提供拡大、健康の保持等によって、ホームレスが自立できる環境を整備します。
○若者の雇用就労支援(31ページ)
 「住まいと仕事の確保法」を制定し、住居がなく、安定した就職が難しい若者等に対して、ハローワーク・自治体・企業の連携のもと、カウンセリングや職業紹介、職業訓練、賃貸住宅への入居などを支援します。
○「住」の大切さ、可能性を重視した政策の展開(40ページ)
 従来の持ち家取得への偏重を是正し、ライフスタイル・ライフステージに合った住宅政策への転換を図ります。
 生活・住宅困窮者にとって、公営住宅などは重要なセーフティネットです。高齢者や障がい者、子育て世帯にも対応できるよう、賃貸住宅の機能の充実、賃貸市場の活性化、家賃補助等の支援策を講じます。
 長期優良住宅の普及促進をはじめ、省エネ化、バリアフリー化、耐震化を目的とした既存住宅の活用・改修と、そのための記録管理・審査・診断などのシステム整備を推進することにより、持続可能な安全かつ安心できる住生活を確保します。
 建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化、関連組織の整理・縮小に取り組みます。また、よりきめ細かな住宅政策を推進するため、必要な予算をすべて地方自治体に一括交付します。
○地球と人に優しい家づくり(41ページ)
 これからの新築住宅は、長寿命・耐震・断熱・バリアフリーで建て替えずに長期の使用に耐える仕様を基準とし、中古住宅のリフォーム・改築も推進します。外断熱・高断熱・窓の改修などを促進するとともに、住宅性能表示の一つの方法として、その住宅の年間のエネルギー消費量を表示する「エネルギー証明書」を普及させます。
 トイレ・浴室の改良、屋内の段差解消、階段の勾配緩和など高齢者が住みやすい住宅リフォームを重点的に支援します。
 太陽光パネルの設置を助成し、電力の電力会社による買い取り制度も拡充します。低炭素社会へ向け、国産材を使った木造りの長寿命住宅を推進します。
 シックハウス対策やアスベストの暴露対策などやさしい家づくりを徹底します。
○安心取引で中古・リフォーム・賃貸市場を活性化(41ページ)
 中古住宅物件に瑕疵がないか等を正しく診断できる人(ホームインスペクター)を育成することで、中古住宅を安心して取引できるようにします。このため、施工現場の記録を取引時に添付することを推進します。  一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止とします。
 高齢者、障がい者、子育て世帯も住みやすい優良で多様な賃貸住宅を整備します。賃貸居住者に対する家賃補助や所得控除などの税制支援も創設します。定期借家制度の普及を推進します。
 住宅ローンをノンリコース(不遡及)型にする環境も整えます。現在は土地の価値のみでなされている「リバースモーゲージ」(住宅担保貸付)は利用しやすくなります。
○木造住宅と国産材の振興で地域に息づく家づくり(41ページ)
 木材住宅産業を地域資源活用型産業の柱とし、地域の自立と振興を推進します。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成するとともに、施工者の技能が客観的に分かる仕組みを作り、消費者が安心して注文できるようにします。
 間伐が遅れているところは、集約化施業によって山村を活性化し、近くの山で採れた木で家づくりができるようにします。

 といった感じで、近年の住宅政策で議論されている論点に一通り触れているようである。前述したように挙げられる項目が多いからこそ、これだけの内容を扱えるわけだが、論じるべき部分を押さえている点は一定の評価が出来よう。一方で、公明党の挙げる政策ともかなりの部分共通点がみられており、住宅政策について総合的に記述した場合には、内容としては同じ方向に行ってしまうということなのかもしれない。
 そういう意味では、内容だけみると現在の住宅政策ともそう変わらないようでもあるが、主流ではないオルタナティブな部分、先進的な取り組みの部分をより前面に出しているように見受けられる。特に目立つのは「持ち家取得への偏重を是正」の部分であり、その結果として「賃貸住宅」に関する記述、特に住宅困窮者関係の内容が多くなっているのが特徴的である。こうみれば、民主党が政権を取った場合には、現政府によって(公明党の主張によって?)政策項目としては挙げられてはいるがこれまではあまり重視されなかった政策に対して、より力が注がれるものとも考えられよう。

 いずれにせよ、これらの提案は現行のハウジングシステムの大きな転換であり、これらを政治主導でどこまで実現しうるのかは難しいところもあろう。官僚・行政機構はもちろんのこと、民間企業や業界、さらには市場の慣行や市民の意識まで含めて変えていかなければならないのであり、かなりの力が必要となる。前述の通り民主党の挙げた項目数は膨大であり、他の分野の政策との関係の中で、住宅分野にどこまで力を入れられるかがポイントになると思われる。

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住宅政策の観点からマニフェストを読む:公明党編

 「住宅政策の観点からマニフェストを読む」の2つ目、自民党と連立を組む現在の与党、公明党について。
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■公明党
 マニフェストは形式が整っておらず構成が分かりにくいのだが、最初に挙げられる「マニフェスト中長期ビジョン」では、「3新しい生活のカタチ」(2ページ)の「老後の安心」の項に、

病気や寝たきりになっても、「住まい」が確保され、医療・介護保険で十分支えられ、医療・介護・生活支援などを備えた「多機能支援センター」が充実し、地域のコミュニティーの中で生活できる。

として、高齢期の住宅の話が書かれている。医療・介護と一体的な扱いではあるが、このような形で住まいの問題が取り上げられているのは、他党と異なる特徴的な部分といえよう。
 しかし、続く「重点政策」では、「命のマニフェスト 命を守る政治」(5ページ)部分で、「特別養護老人ホーム等の施設を16万人分整備」と書かれるだけであり、住宅政策としてはあまり捉えられていないようにもみえる。「重点政策」の中では、住宅に関連するものとして、「育むマニフェスト 人を育む政治」(6ページ)で、「訓練・生活支援給付の恒久化、非正規労働者の社会保険適用拡大、住宅確保等で雇用の安定・拡大」として、非正規労働者の住宅問題が挙げられてはいる。

 より具体の内容を挙げた「2009衆議院選挙 選挙公約」(9ページから)では、住宅関係の項目も多数挙げられている。膨大な数の項目を挙げているから、実際にどこに重点を置いて取り組むのかは分からないのであるが、特徴的な部分について抜き出せば次のようになる。

○都市部における介護・看護サービス付き高齢者住宅の計画的整備(20ページ)
 都市部における独居高齢者および高齢者夫婦世帯の著しい増加を踏まえ、地域で住み続けることができるよう、居宅における必要な介護・看護サービスの提供を保証する高齢者住宅の計画的な整備を強力に進めます。
○障がい者の住宅確保を支援(24ページ)
 障がい者が安心して暮らせるための住宅を確保し、ヘルパーなどが必要なサービスを提供できるようにします。また、障がい者と親が一緒に暮らすための住宅(アパート・マンション)を整備し、必要なサービスを提供します。
○再就職支援付き住宅手当の拡充(33ページ)
 離職者などが再就職のための活動に際し、住民票や金融機関の口座が必要となる場合が多く、安定した住居を確保する必要があることを踏まえ、再就職のための活動を安心して行えるよう、住宅費等を支援する「再就職支援付き住宅手当」の拡充を図ります。
○中古住宅市場などの活性化(63ページ)
 中古住宅市場の流通量を3倍に増やします。 リフォーム工事保険などの各種保険制度の創設
○住宅リフォーム融資制度の拡充 (63ページ)
 中古住宅の価値を目利きする「ホームドクター(ホームインスペクター)制度」の創設。
 中古住宅市場の流通促進と長期優良住宅(200年住宅)の普及などを促進するため、住宅の設計図や修繕記録などを記した「家の履歴書」の整備を図ります。
 マンション管理適正化法の拡充により、マンションの適切な管理や老朽マンション再生の促進を図ります。
 住宅金融支援機構による住宅ローンの拡充や、既往債務の返済条件の緩和、ノンリコースローン (担保不動産価値を上回る返済のない融資制度) が提供される仕組みの構築など、住宅金融の拡充で住宅市場の活性化を促します。
○安心安全な住宅供給と生産性向上の両立 (64ページ)
 新築はもとより、リフォームやバリアフリーなどの改修工事において、安心安全な住宅の供給と住宅建築市場の活力を両立すべく改正建築基準法の一層の整備や機動的な運用を行います。特に、耐震偽装などを未然に防ぐ厳格な建築制度の確保と建設業の生産性向上の両立を目指し、構造計算適合性判定の円滑化を図るなど、建築確認手続きのスピードアップを図ります。また、住宅建築にかかる速やかな紛争処理を行う機関の設置と、詐欺の対策、悪徳業者対策に取り組みます。
○建築基本法(仮称)の制定 (64ページ)
 建築関係者をはじめ広く国民が共有できる質の高い建築物の整備に向け、目標や基本理念、関係者の責務を定める「建築基本法」(仮称)を制定します。
○住宅セーフティネットの確保 (66ページ)
 高齢者等の持ち家を借り上げて、子育て世帯等に転貸する「住み替え支援事業」を幅広く展開します。また、リバースモーゲージの普及を促進します。
 良質な民間賃貸住宅の供給や賃貸に関わる紛争の防止など、適正な民間賃貸住宅市場を整備します。 介護サービスや生活支援サービスを24 時間 365日受けられるようケア付きの高齢者向け賃貸住宅を 2014 年度までに新たに 15 万戸供給します。また、公的賃貸住宅団地に医療・介護・子育てなどの施設を1施設以上整備し、地域の福祉拠点として再生します。
 高齢者向けに優しい街づくりを進める「安心住空間プロジェクト」を一層推進することで、高齢者向け民間優良賃貸住宅や公的賃貸住宅団地等において介護等の高齢者向け福祉拠点を一体整備するとともに、民間賃貸住宅に高齢者福祉施設を整備するための助成制度を措置します。
 保育サービス等を提供する子育て支援施設や障がい者福祉施設などが併設された公的賃貸住宅の整備を推進します。
○公的住宅の整備促進(66ページ)
 地方公共団体による既存民間賃貸住宅ストックの借り上げ制度やPFI方式による公営住宅ストックの更新など、民間に管理を委託する等柔軟な方式で、高齢者世帯・子育て世帯の家賃負担を軽減する住宅セーフティネット対策を強化します。
 65歳以上の高齢者および障がい者が居住する公営住宅のバリアフリー化率を 2015 年度までに 100%にします。また、民間住宅についても現行のバリアフリー改修税制の充実を図るなど高齢者や障がい者が安心して暮らせる環境を整備します。
 公的住宅の家賃減額措置等を拡充し、子育て世帯や年金生活者等の安定居住確保に向けた支援措置を実施します。また、大規模地震災害対策や孤立死問題への対応など、団地居住者と周辺住民とのコミュニティーを形成する地域交流福祉拠点を目指します。
 公的住宅への定期借家制度の導入について、既存の住民の権利と暮らしを脅かすことのないよう、理解と協力に基づき適正に運用します。
 都市再生機構(UR)の賃貸住宅ストックの活用など、既存居住者をはじめ高齢、子育て、新婚など住宅困窮世帯の住宅セーフティネットとして 40 万戸確保します。

 と実に盛りだくさんなのであるが、住宅セーフティネットに関する項目が多いのが特徴的と言えよう。自民党のものではこの部分があまり触れられていなかったのと対照的である。また、施策の多くは、「整備」「供給」「手当」「助成」「軽減」などの、公的な財政措置を伴うものとなっており、このあたりは「市場重視」を掲げている自民党の考え方とは異なるようにも見える。連立の中で役割分担がなされているのか、あるいは両党の考え方は根本的に異なるのかは分からないが、両者の関係は補完的であるということが出来よう。
 内容が細かく具体的なのも特徴であり、特に社会的弱者に向けた福祉的住宅に関する部分については、「住宅と福祉の連携」が前面に出されているようで、市民団体が求めている内容に近いものも多くみられる。具体の戸数目標などの数値が出ているところも興味深いのだが、「ケア付きの高齢者向け賃貸住宅を 2014 年度までに新たに 15 万戸供給」とか、「高齢者および障がい者が居住する公営住宅のバリアフリー化率を 2015 年度までに 100%」など、あと4~5年で本当に実現可能なのか?と思われる部分も多い。また、これらの施策にかかるコストは膨大であり、これをどう手当てするのかも問題となる。

 全体としてみれば、高齢者などの社会的弱者向けの住宅セーフティネットの提供を中心とした政策であり、この部分に重点を置くことについては評価出来るが、近年の方向性とは異なる「大きな政府」を志向するものといえ、このようなある意味での転換が、発想の異なる自民党との連立の元で可能かどうかは不明である。また、政策の実現性や財源などの面で、若干の疑問点も残ると言えよう。

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住宅政策の観点からマニフェストを読む:自民党編

 8/30の総選挙を前に、各党がマニフェストを出している。まだ公示前で、この後内容が変わるかもと言っている政党もあるようだが、一応は各党の考える政策が出揃ったことになる。今回の総選挙は、政権交代が起きる可能性も高く、その意味では各党の政策をじっくりと比較検討することが必要だろう。ということで、私の専門の「住宅政策」「都市計画」の観点から、各党のマニフェストを読んで比較してみることにした。
 まずは住宅政策に関して、党別に内容をみていこう。
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■自民党
 デザインに凝って内容を簡潔にまとめた「要約版」の方には、住宅に関する記述はほとんどみられない。14ページの環境の項に「省エネ住宅…などによるグリーン化の推進」とあるだけである。セーフティネット関係でも、高齢者福祉関係でも、住宅関係には触れられていない。とみれば、住宅はあまり重視されていないようである。

 一方、より詳しい個別項目を載せた「政策バンク」では、26-27ページの「6.地域活性化・地方分権」の項に、「『すまう人』視点での住宅対策」が挙げられている。そのまま引用すれば、次の通りである。

最大600万円の住宅ローン控除など過去最大の住宅取得支援を継続・強化し、ライフステージに応じた持ち家の取得、リフォーム、住み替えを支援する。特に子育て世帯や高齢者等が安心して生活出来るよう、子育て支援施設やケア施設の併設された住宅等、良質な賃貸住宅を供給する。また、「ストック型社会」の実現のため、2世帯・3世帯住宅や200年住宅の推進など住宅の長寿命化を進めるとともに、既存住宅・リフォーム住宅を整備する。

 内容としては、近年の国交省の進める住宅政策の通りであるが、後で触れる他党のマニフェストに比べると、細かい項目立てがされておらず、詳しい内容も書かれていない分だけ、若干説明不足の感も受ける。
 例えば、1文目では「ライフステージに応じた持ち家の取得」としているが、2文目では「子育て世帯や高齢者等」には「賃貸住宅を供給」とされており、子育て期という、現状では一次取得が最も行われやすいライフステージでの住まいを、持家・賃貸どちら中心で考えているのか、ビジョンがみえにくい。基本は持ち家政策で、困窮層向けのセーフティネットあるいは代替策として賃貸住宅と考えているのであれば、むしろそのようにはっきり書くべきと思われる。
 また、セーフティネットとしての公的住宅の位置づけに全く触れていないのも、今日の住宅問題を考えると、踏み込みが足りないようにも思える。22ページの「3.雇用対策」の「職業訓練、職業紹介等の雇用のセーフティネットの構築」の項に、「住居のない方への住宅と生活の支援…など、訓練、再就職、生活、住宅への総合的な支援に取り組む」とあるのだが、具体的な方策は書かれていない。
 「持ち家の取得」を中心としながらも、昨今の金融危機を踏まえた対応策がみられないのも、若干問題といえるだろうか。住宅ローン破綻が多数起きると言われている状況であるにも関わらずである。26ページの「5.経済成長対策」の「金融対策」の項で、「住宅・土地金融の円滑化」とあるが、ここの記述は「企業の資金繰り支援」とされており、「すまう人」の視点からではない。
 このあたりについては、書かれていないだけであって、記載されていないその他の政策に関しても、基本的には現在のものを踏襲するということと思われるが。

 以上のようにみれば、全体としては現在の住宅政策に大きな問題はないとして捉えており、近年進めている「市場重視の住宅政策」をそのまま継続する、というふうに理解してよいのであろう。その意味では、自民党政権が続いた場合には、住宅政策における変化は基本的にはないものと考えられる。

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