とあるところからこのテーマでインタビューを受けた際に、発言内容を考えるためにまとめたメモに基づいています。
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被災建物の安全性の判定に関しては、地震後に以下の2つが行われる。
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(1)応急危険度判定
・応急危険度判定士(行政の建築系職員及び民間の建築士等)が外観目視で実施
・余震等で発生する二次災害の防止のため、建物が安全に使用出来るかを調査
・危険(赤)、要注意(黄)、調査済(緑)の3分類
(2)建物被害認定調査
・行政職員(建築系以外も含む場合あり)が基本的に外観目視で実施
・被災者の支援等に係る罹災証明のため、建物の損傷の程度を調査
・全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4区分
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(1)は地震直後の使用に関する安全性の調査であるが、その後も引き続き居住出来るか、補修をすれば居住出来るかを判断するものではない。(2)は損傷の程度の調査であり、安全であるか、居住に耐えられるか、補修が可能かを判断するものではない。別々の方式・担当者によって行われるため、両者の結果が整合しないこともある。
しかし、これらの判定・調査結果により、住民の復興に対する考え方が大きく左右されるのが実情であり(危険・全壊なのだから建て替えなければならない、など)、住民間での意見が食い違うことになる。また、これらの判定は、「区分所有法」及び「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」で規定されている、以下のような建物の滅失の区分とは対応していない。よって、「全壊だから全部滅失」「大規模半壊だから2分の1超が滅失」と判断出来るわけではない。
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1.全部滅失 →敷地共有者の5分の4以上の賛成で建替えは可能
2.一部滅失 →区分所有者の5分の4以上の賛成で建替えは可能
2-1.建物価格の2分の1超が滅失 →4分の3以上の賛成で復旧可能
2-2.建物価格の2分の1以下が滅失 →過半数の賛成で復旧可能
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阪神大震災の被災マンションでは、上記の公的な判定の他に、管理組合独自で建物の調査診断を行っているところも多い(各種アンケートによれば半数以上:主に旧マンションの施工会社や管理会社が実施)。
しかし、地震直後に丁寧な調査を行うのは難しいこと、住民は出来るだけ早急に結果を求めること、及び建て替えるかもしれない建物に多額の調査費はかけられないことから、比較的簡易な調査にとどまっているものと思われる。つまり、安全性の判定は必ずしも適切な形では行われていない可能性があり、そのような不確実な情報に基づいて、住民は復興の方法を判断しなければならない状況にあったといえる。
そのような中で、建物の工費解体が打ち出され、また建替えに対しては各種支援策が用意されたことによって、補修が可能だった物件でも建替えが行われる傾向にあった、とも言われている。
建替えの場合、現在の建築基準法の基準に基づいた建物が建設されるので、新しい建物の安全性は(一応)担保される。しかし、補修の場合、選択した工事方法によって建物がどの程度安全となるか、それを明確に示す基準は存在しない。そのため、安全性の保証という観点から、補修よりも建替えに意向が向きやすい面がある。
建替えと補修での「安全性」の問題は、資産価値という観点からも指摘出来る。建て替えられた建物であれば、新築物件として評価され、一般の新規分譲マンションと同様の資産評価がなされる。しかし補修の場合、どの程度安全なのかを示す明確な指標は存在せず、また補修された中古物件の資産価値を適正に評価する方法も確立していないため、「被災物件」とだけみなされて、資産価値は著しく低く算定される可能性もある。その結果、どうせ費用を負担するのであれば、資産価値が確実に確保出来る建替えの方がよいとの判断が働きやすい面もある。
阪神大震災の再建(建替え)マンションでの合意形成過程をみると、被害が著しい事例では、初動期の建物調査や補修との比較検討は行われず、すぐに建替えを前提とした活動が始められている。被害が相対的に小さい事例では、初動期に「建替えか補修か?」の議論・検討が行われ、この部分に時間がかかる傾向がみられる。
つまり、建物が明らかに「安全ではない」ならば、進むべき方向は明確であり、迷うことなく取り組みが始められるが、「安全かどうか分からない」場合には、この点の判断に時間がかかり、またその過程で「危険なので建替えを」「ある程度安全なので補修で」という建替え派/補修派という区分が生まれて、合意形成が困難になるといえる。
建物が「安全ではない」状況は、比較的目に見えやすいものであり、住民にとっても理解・納得がしやすい。しかし「安全である」というのは、建物の中の見えない部分まで調べてはじめて言えることであり、また専門的な観点からの評価・判断となるため、住民には理解しにくいのが実情である。
結局のところ、個々の住民、及びマンション住民全体が、いかにして「安全性」について納得出来るか、による。
被災直後では、住民が各所に分散して避難しており、集まって十分が議論を行うのは難しい。また、住居の復興を急ぐ意味からは、時間をかけて判断をまとめていくというのも出来ない。そのような震災時という困難な状況において、多くの住民が納得出来る形で建物の「安全性」を判断し、その判断結果に基づいて、適切な復興の方向性を検討出来るような仕組みが求められる。専門的な観点から、建物の安全性を判断する方法や基準を示し、判断を実施する仕組みをつくることが必要となろう。
しかし、そのような客観的な判断があっても、最終的にはその結果を住民が主観的に理解し受け入れなければ、復興に向けた取り組みは実現出来ない。阪神大震災の被災マンションでも、特定の建築士が行った建物診断及び復興費用の試算結果に納得しない住民が、別の建築士に再度調査を依頼したような事例もみられる。
個々の住民、そしてマンション住民全体として、建物の安全性をどのように理解して納得するか、そのプロセスが問題になるといえる。その意味では、震災が起きる以前に、被災した場合の建物の「安全性」をどのような方法・手続で判断するかについて合意を取っておくという、「事前復興」的な考え方もあるかもしれない。
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