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Dec 07, 2006

「金」だけで解決出来るか?:京都市の不適格マンション対策

 京都市が市街地での高さ規制の導入を進めているそうだが、そのために発生するであろう既存不適格建物に対して、建替えの際に設計費や共用部分建設費の助成を検討しているという(京都新聞のこの記事より)。優良建築物整備事業の補助に、市独自に上乗せするのだとか。
 確かに、金銭的な補助があれば、建替えはやりやすくなるのは間違いないのだが、不適格の場合には「お金」の話だけではない。不適格とは、つまり建てられる容積が減るわけだから、建て替えれば元の所有者が持つ床もその分減るわけである。元々の住戸が広ければ多少床が減っても問題はないだろうが、狭い住戸であれば、減ってしまえば元のような生活がままならなくなる。元の広さを確保しようと思えば、一部の人に出て行ってもらい、その床の権利を買って残る人で分配するしかない。そういうことを受けいられれるか?合意出来るか?という問題が大きいのである。
 同様のダウンゾーニングで不適格マンションが多数発生した福岡県春日市では、行政と住民とがともに検討した結果取り決めた対応の中で、「居住権の保障」をうたっている。住み続けたいのに、住戸面積が狭くなることで住み続けられなくなる人、出て行かなければならない人が出ることを問題とし、その点を踏まえた対応策を検討している(その辺りの詳細はここの論文を参照)。つまり、住み続けられなくなることを出来るだけ避けるという観点から、考えているのである。
 京都の場合はどの程度の不適格が生じるのか分からないが、中には「住み続けられなく」なるような建物も生じるのだろう。そういう建物に対して、金銭的補助の効果がどれだけあるだろうか? 所有者みんなが納得して面積を減らしたり、一部の人が希望して出てゆくのならばよいのだが、そうでなければ誰かの権利を無理矢理買い取って出て行かせるような状況にもなりかねない。そのための「資金」に補助金がつながるのであれば、なんと皮肉な話ではないか。こういう買取の場合も考慮してか、弁護士などをアドバイザーとして派遣する制度も用意するようだが、そもそも合意が難しい状況下でアドバイザーを派遣しても、あまり効果的ではないのではないか。
 不適格の場合は、本来的には「円滑に小さくする」ための対応が必要なのであり、補助金にそのような効果があるのかどうかも含めて、この辺りの本質的な問題が考えられなければならないのだろう。(ちなみに前述の春日市の件では、建替えの際には出来るだけ容積を減らすよう、住民側も努力するとされている)

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Comments

Hello, of course this article is really nice and I have learned lot of things from it on the topic of blogging. thanks.

Posted by: road riot hack | Nov 18, 2014 06:26 PM

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