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Feb 10, 2009

つくばの研究所から、大阪の大学に移ってきて

 NPO法人西山記念文庫のニュースレターに書いた原稿です。
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 2008年の4月に大阪にやってきて、早くも1年が経とうとしている。生まれてこのかた過ごしてきた関東を離れての、初めての関西での暮らし。関東と関西では生活環境が大きく違うと聞いてはいたが、実際住んでみると確かに異なる点が多い。人の気質や行動様式、商店の種類や並ぶ品物、そして街の雰囲気や建物の特性など、様々である。特に街の様子は興味深くて、整備された街区の内側に細い路地が残っていたり、古い木造の長屋やレトロな雰囲気の建物が軒を連ねていたり、昔ながらの商店街が活気を保っていたりなど、実に面白い。家から大学までの通勤の途中でも、また週末に家の周りを散歩するだけでも、いまだに新たな発見があるから、いうなれば毎日「まちあるき」をしているようなものである。
 なにしろ、それまで8年間住んでいたのは、茨城県のつくば市。研究学園都市として計画的に整備された、郊外のニュータウンである。直線的で広幅員の車道と上を渡るペデストリアンデッキ、規則的に立ち並ぶ中高層の集合住宅群と広いオープンスペース、道路沿いに連なるスーパー・コンビニやファミレス…まるで正反対の世界だから、その分だけ今の大阪の環境が面白く感じるのだろう。計画的につくられ整ってはいるが、その分制御しきれない異物も目立ったつくばの街と、一つ一つの建物は自由で個性的だけれども、全体としてはなんとなく調和が取れている(気がする)大阪の街。車がなければ全く暮らせない街と、歩ける範囲で用事がほぼ済む街。学生と若夫婦が中心の街と、お年寄りを多く見かける街。どちらが良いということではないけれども、このあたりの対比は、住宅・都市分野の研究者としては、大変興味深い。
 研究者としての立場や置かれた環境も、つくば時代とでは大きく変わった。以前の所属は国土交通省の研究所だったから、任期付の研究員とはいえ一応は国家公務員の身分。国の政策に直接・間接に役に立つ(とされる)研究課題と具体的な成果が求められ、様々な関係者との間で調整をしながら作業を進める形で、個人としての活動上の制約もいろいろあった。それにひきかえ、現在は大学のグローバルCOE関係の研究員で、自分で掲げた調査研究のテーマを、基本的には自分自身の手で、自己裁量で進めていけばよい。これもどちらが良いとは一概には言えないけれども、自分のペースで自由に課題に取り組めるのは、大変ありがたいことである。また、建築の研究者ばかりが集まった先の研究所とは違って、現在所属している学際的な研究組織で、建築以外の人文社会系の教員や同僚と意見を交わすようになったのも、大きな変化であり、貴重な機会だといえる。
 このような生活上・研究上の環境の変化がどういう形で表れてくるか、今はまだ分からないけれども、これが研究者としての一つの転機になりそうな気もする。東京から離れた大阪という地で、国という立場を離れて大学に身を置いて行う研究活動は、おそらくこれまでの数年間とはまた違ったものになるだろう。現在主に取り組んでいる課題の「民間非営利組織(NPO)による住宅供給・居住支援事業」にしろ、ずっと関心を持って扱ってきたテーマの「住民主体のまちづくり」にしろ、現場レベルで行われる活動が最も重要なのは言うまでもないが、と同時に個々の活動を支えるための仕組みや制度も考えられなければならない。そのような意味で、マクロな仕組みの検討に主眼を置いたこれまでの関東での研究を踏まえつつ、現場に根ざした創意あふれる活動が長年に渡って積み重ねられている関西で、改めて研究を始めることで、何か新しい展開が見いだせるのではないかと、期待している。
 この1年は、大阪での生活と大学の環境に慣れるのに多くの時間と労力を費やして、正直言って研究活動はあまり行えていなかった。また、関東在住時に関わっていたプロジェクトも残っていたので、東京出張も多く、全体としては東京を向きながら活動せざるを得なかった部分も大きい。そういう意味では、ようやくこの春から本格的に関西での研究生活が始まることになるのだろう。関西の研究者や現場とのネットワークもまだ全然出来ていないし、最大3年と任期が限られている中でどこまでのことが出来るのか不安も多いけれども、現在置かれた環境を生かして、関西に来たからこそ出来たといえるような、住宅・都市の研究を行えればと思っている。

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