都市計画の観点から2010マニフェストを読む:その他政党編
住宅政策編と同様に、残る4党(国民新党・みんなの党・新党改革・たちあがれ日本)のマニフェストについて、都市計画関係の内容を整理する。
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■国民新党
「2010政策集」の中で、都市計画やまちづくりについて直接的に触れているものは見あたらない。関連がみられるものは、防災や公共事業、コミュニティに関する、以下の内容だろうか。
Ⅰ 国土・国益を守り抜く-伝統・誇り・価値の継承
9.防災事業の一層の強化
○大地震や異常気象など予期せぬ災害から、国民の生命、財産を守る為、国民新党は学校、病院の耐震化の推進、電線地中化、河川整備や砂防事業の一層の充実を図ってゆきます。
Ⅱ 経済成長による財政健全化-景気回復に全力投球
7. 「いきいき地方復活交付金制度」の新設
○地方経済の再生の為、地方交付税を一層充実させ、更に「いきいき地方復活交付金制度」(年間3兆円程度)の新設を図ります。本制度により懸案となっている学校・病院など公共施設の耐震化、電線地中化、上下水道・浄化槽の施設更新、木製ガードレールの設置など、地域密着型公共事業への転換で地方を元気にします。
Ⅲ 郵政改革のゴールは本物の地域力-安全・成熟の国土形成
6.郵政施設を拠点とした防災、介護サービスの提供
○高齢化が進む地方において、郵便局を核とした防災情報の提供や高齢者の安否確認、「かんぽの宿」 等における介護サービスの提供を行い、地域における安心・安全の拠点化を推進します。
Ⅳ 小泉・竹中改革の抜本的見直し-格差の解消、地域の再生
5.中高齢者層の社会参加を推進
急速に少子高齢化社会が進み行く今日、これまでの我が国の成長、地域の発展を支えてこられた高齢者の方々の社会参加のあり方が問われています。国民新党は定年制度の延長、シルバー人材の活用、地域コミュニティへの支援など を一層推進し、我が国を支えてきた高齢者パワーで活力ある地域社会を作ってゆきます。
個別の事業や政策が並んでいるわけだが、これら全体をみても、どういう都市・地域像をイメージしているのかは、ちょっと見えにくい。
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■みんなの党
「アジェンダ2010成長戦略」の中で、都市計画・まちづくりに関連するとみられる内容は、以下の3項目くらいか。
Ⅱ 世界標準の経済政策を遂行し、 生活を豊かにする!
1.未来を切り拓く「経済成長戦略」を遂行する
⑭「全額税額控除」の導入等寄付税制の拡充などによりNPO活動等の公益活動を活性化。
Ⅲ「地域主権型道州制」 の導入で格差を是正する!
1.地方自治体へ3ゲン(権限・財源・人間)を移譲し、地域のことは地域で決める
④地方自治体が行う事務に対する国の「義務付け・枠付け」を廃止し、自主立法権、課税自主権、住民参加などを充実し地方政府を確立。
3.平成の農地改革で農業を地域の基幹ビジネスにし、食糧自給率を向上させる
①米の減反政策(生産調整)を段階的に廃止するとともに、農地転用規制( 「ゾーニング」=土地利用規制の導入など)を徹底、耕作放棄地の有効活用を図る仕組みを確立。
一つ目はまちづくりには関係してくるだろうが直接的なものではなく、二つ目は条例による自由な規定を認めるものと考えれば、都市計画制度の運用にも係わってこよう。三つ目は、農地という土地利用をゾーニングの中で位置づけると読むならば、都市計画制度に踏み込んでいるといえよう。
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■新党改革
「新党改革の約束2010」では、「住宅・都市政策」という項目が立てられているが、中身は住宅の話が中心であるので、内容の紹介は住宅政策編に譲る。この他に「超高層縦型都市」という項目があり、内容は以下の通りである。
計画11:世界最高の暮らし
□超高層縦型都市
○東京や大阪は世界的な大都市ですが、先進国の大都市との違いは、容積率です。日本で最も容積率が高いのは、東京都港区の300%。これは、平均3階建てになることを意味します。一方、ニューヨークのマンハッタンでは、この数字は1400%。日本は国土が狭いにも関わらず、有効に土地利用を出来ていないことが分かります。
○土地利用を高め、生活を充実させるために、都市圏の中心部を、超高層縦型都市に大改造します。マンハッタンのように、超高層ビル、超高層マンションが林立する街へ。高層化すれば緑地も増やせるので、ヒートアイランド現象を和らげることができます。一つの土地利用者が多くなるので、住宅価格もぐっと安くなります。多くの人が、割安に都心部に住居を構え、1時間以上もの通勤が必要なくなります。
ここまで具体的な都市の空間イメージをマニフェストに書くというのは、大変特徴的である。イメージとして若干古いという感じがするのは否めないが、それでもここまで明確に書くのは(この主張に賛同するかどうかは別として)踏み込んでいるものと評価できよう。
この他、都市計画・まちづくり分野に関係しそうな内容としては、以下の大きく2つの項目が挙げられる。
改革その2:日本経済の復活
計画6:地方分権
□一国二制度、大阪特区構想
○廃県置州による地方分権の実現は、憲法改正を行わなければ実現に踏み切ることはできず、これには、相当な時間を要します。
○本格導入の前段階、革命的な実験の場として、特区を設けます。地域が責任を持って、独自のルールに沿った制度・行政モデルを容認し、新たな国の活性化モデルとする特区です。これは、日本国内に2つの制度があるということで「一国二制度」と言えます。
○この第一弾として、知事が賛同している大阪府で実践します。「大阪特区」では、税率や規制も大阪府が決めます。「大阪特区構想」を通じて、大阪を元気にし、その元気を他の地域にも伝播させ、日本を元気にします。
改革その4:安心して暮らせる社会
計画9:70歳現役社会
□長屋の声かけコミュニケーション、祖父母力の強化
○地域再生の鍵は、かつての長屋が持っていた「声かけ」によるコミュニケーションの復活、おじいちゃん、おばあちゃんによる地域再生(祖父母力の強化)だと考えています。母親が忙しくて夕食の準備が出来ないときには、近所の家で食べさせてもらう。子供が夕方歩いていると、ご近所さんが帰るよう促してくれる。買い物に行けない高齢者のために、隣家の子供がお使いに行く。おじいちゃん、おばあちゃんがパトロール隊を結成し、孫の安全を守る。
○この長屋の声かけ、祖父母力をキーワードに、地域コミュニティを再生させる原動力とします。
前者は「大阪」としているところに若干政治的な意図も感じるが、特区で「一国二制度」を実験するという姿勢は、やはり踏み込んだものといえよう。後者は地域コミュニティの話で、既に各地で取り組まれている話で新しくはないが、それでもこのような形で書くところは特徴的である。
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■たちあがれ日本
「政策宣言2010」の中で、都市計画・まちづくりに直接言及したものはない。関連がみられるものとしては、以下の2項目が挙げられよう。
【5】強いふるさと
1. 山と海を守り、里を守り、治安を守る
②自然共生型のエコ公共事業
・自然と共生した世界最先端の美しい国土をつくっていくことが日本の新たな強みです。道路財源の一部を「環境税」に振り替え、その税収を活用して新たな自然回復事業、つまり「エコ公共事業」を全国で実施していきます。
⑥地域力で「空き交番」なしへ
・安全な社会のために「空き交番」全廃へ、警察官増員とともに、自治会、消防団、NGO、学生など「地域力」をフル活用して対応していきます。
前者は具体的にどのようなものかのイメージは掴みかねるが、後者は「交番」を軸に地域力を高めるとの発想であり、社民党や国民新党が掲げていた「郵便局」を核とした地域再生と通じるものがあろう。
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以上見てきたが、やはり都市計画に直接言及した政策はほとんどないのが実情のようである。唯一新党改革が具体的な都市像に触れているが、その他ではどういう都市を目指そうとするのかのイメージもみえてこない。そのあたりは、各地域で決めていけばよいということなのかもしれないが。
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