被災地域外の仮住まいで入居後の支援を実施する方法
先に、あんしん賃貸支援事業の枠組を使って、被災者の仮住まいへの入居を支援することが出来るのではないか、とのアイデアを書いた(「あんしん賃貸支援事業の枠組の被災者支援への活用案」)。ここでは、被災地において個々の被災者の相談に乗り、今後の生活再建の流れを考えた上で、それに合わせた仮住まいの形を提案する…という(仮住まいへの)「入居前支援」が重要だと考えていて、そのために被災地の自治体をベースにして居住支援協議会を立ち上げて居住支援団体の活動を行うことを検討したのだが、甚大な被害を受けて緊急段階の対応に追われている被災自治体では、現時点でこのような取り組みを始めるのはやはり難しいのかもしれない。
となれば、入居前支援は無理だとしても、「入居後支援」は行えればと思う。被災後の不安定な状況で慣れない地域に来た被災者に対しては、仮住まいへの移転後もある程度の生活面での支援が必要と思われるからである。しかし、このような域外に置ける入居後の支援活動を位置づける制度はないと思われ(詳細は未確認)、また仮住まいの提供に要する費用は災害救助法の弾力的運用で国負担になるとしても、これらの生活支援までも対象になるのかは定かではない。
と考えると、先に示した「あんしん賃貸支援事業」のスキームを被災者を受け入れる地域において活用し、居住支援協議会が行う活動の一環として「民間賃貸住宅及び公営住宅に移転してきた被災者の入居後支援を行う」というのを位置づけて、支援団体による仮住まいへの移転後支援を行うアイデアもあるような気がする。
つまり、既に居住支援協議会が既にある地域では、来年度の活動に移転してきた被災者の入居後支援を位置づけて、既存の支援団体あるいは新規の支援団体と協力して、移転後の支援体制を構築する形が考えられる。現時点で居住支援協議会がない地域では、被災者支援を目的にして新たに協議会を立ち上げて、関係機関との間の調整を行い、かつ支援団体を募集して支援活動を行う、みたいな形が考えられるのではないかと。そしてこれらの被災者支援に要する費用は、(来年度から開始される予定の)居住支援協議会活動支援事業で国が助成を行うという考えである。
こういう形をとれば、被災者の生活を支えたいと考える民間ボランティア団体・NPOも制度的な位置づけが得られるし、活動に要する費用に関しても(どの程度かは分からないが)公的な負担が可能になるのではないか。
そして、このような入居後の支援を行うことで、「被災地域外への仮住まい移転に関する(一抹の)不安」で書いた内容の一部も、ある程度解消できるのではないかと考えられる。
「被災者」は住宅セーフティネット法における「住宅確保要配慮者」に位置づけられているから、住宅確保要配慮者を対象として行われる居住支援協議会の活動の中に、被災者を位置づけることは仕組み的には問題ないと思われる。若干問題になるとすれば、当該地域外から来た住宅確保要配慮者を対象にする点だが、平時の支援においても県外から来る人の対応も行っているのであるから、このあたりは問題はないのではないか。
なお、今年度のあんしん賃貸支援事業の提案募集では、上記のような「居住支援協議会が行う民間賃貸住宅等への入居の円滑化に係る活動の支援に関する事業」の他に、「既存賃貸住宅活用に係る地域ネットワークの形成・活用促進事業」、つまり「既存賃貸住宅を借り上げることによる公営住宅の供給」を検討することも位置づけられているから、それこそ民間賃貸住宅借り上げによる一時避難住宅・仮設住宅の供給も、この枠内で検討できるのではないか。
さらにいえば、居住支援協議会の活動目的は、民間賃貸住宅への入居支援にとどまるものではなく、公的賃貸住宅ストックの活用に関することも含まれるから(実際、神奈川県の居住支援協議会では、この両者を柱として位置づけている)、公的住宅における被災者の受け入れの話も、この協議会をベースにして検討できるのではないか。そうすれば、被災者の仮住まいにおいて、公的住宅と民間賃貸住宅とでどのような役割分担をするのか、両者をあわせた形でどのような受け入れ及び入居後の生活支援の体制が構築できるのか、というようなことも議論が出来るだろう。
例えば、罹災証明があり制度的に問題ない人は公的住宅で、罹災証明がない人は民間が提供するボランティア的な住宅で受け入れるとか(福井県ではそのような形を考えている様子)、入居が中長期に渡る見込みの人は一時避難からそのまま仮設住宅扱いにするなど柔軟な対応が(相対的に)しやすい公的住宅で受け入れ、比較的短期で現地に戻れそうな人は民間賃貸住宅で受け入れるなどの、適切な対応がとりやすくなるのではないか。
被害が非常に大きい分、被災地の避難所から動けない人も多く、仮住まいへの移動はまだ実際にはそれほど多くはないのだろう。しかし、いずれ移動が増えてきた時のことを考えて、例えば上記のような形で受け入れ体制を考えておくことも必要かもしれない。
そして、このような体制が確立出来たところから先に/を中心にして、仮住まいへの受け入れは進めるべきではないかとも思う。被災者であっても自分で判断して動き自力で状況に適応出来る人もいるが、多くの場合には様々な困難を抱えて不安な立場にいるわけであるから、住まいというハードさえ提供すればよいわけではなく、その後の生活を支えるソフトも必要なわけで、両者の提供が可能な都道府県を軸にした域外受け入れの仕組みを整えた方がよいと考える。
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