空き家賃貸住宅の被災者仮住まいへの活用を考える(1)
被災者への仮住まいの提供を推進する人々は、「全国には750万戸の空き家があり、そのうち400万戸は賃貸住宅であるから、仮設住宅を建設するよりもこれらの空き家ストックを活用すべき」という主張をすることが多い。確かにこれだけの空き家があるのだから、これらを被災者の仮住まいに活用することは必要だろう。
しかし、「全国400万戸の賃貸住宅を活用」と言ってしまうのは、あまりに雑駁すぎるようにも思える。東北地方(及び茨城・千葉など)の被災者を受け入れるために、いきなり全国津々浦々の空き家を活用することを考えるのは、被災者の生活再建のことを考えればあまり現実的ではないし、また一口に「空き家の賃貸住宅」といってもその状況は様々であるから、そのあたりも考慮した上で、「どこの/どういう賃貸住宅の空き家を/どのように活用するか」を考える必要があろう。
ということで、全国400万戸の民間賃貸住宅の空き家がどのような状況であるのかを改めて捉え直した上で、それらを被災者の仮住まい−一時避難の受け入れというよりは、2年程度の中長期に渡って移住する住まい−としてどのように活用できるのかを考えてみたい。
「全国400万戸の賃貸住宅」というデータの出所は、平成20年住宅・土地統計調査とみられる。この調査の「結果の概要」の「第1章 住宅・世帯の概況(PDF)」では、平成20年(2008年)の空き家は「757万戸」で、総住宅数5759万戸に対する割合=空き家率は「13.1%」とされている。この空き家のうち、「賃貸用の住宅」が「413万戸」となっており、この数字が「全国400万戸の賃貸住宅」の根拠と思われる。
これらの空き家賃貸住宅を被災者向けの仮住まいとして活用する際に考慮しなければならない事項としては、次のようなことが挙げられるだろう。これらを踏まえた上で、被災者の仮住まいとして活用することが出来る/望ましい賃貸住宅はどの程度あるのかを考えてみる。
1.住宅の立地: 生活・住宅再建を考えれば、出来るだけ被災地に近いところが望ましい。
2.住宅の質 : 仮設住宅相当で2年かそれ以上住むとすれば、一定の住宅の質が必要。
3.周辺の環境: 慣れない土地で暮らすため、周辺の生活環境が整っている方が望ましい。
なお、本来は市町村単位で詳細に検討することが望ましいのだが(特に被災地に関しては)、作業時間の関係とデータの制約を考えて、以降の作業ではとりあえず都道府県単位で考える。
まずは全国の状況についてみてみる。「2.住宅の質」に関して重要なのは、建築時期・床面積・設備などの住宅内部の性能・環境なのだが、空き家については住んでいる世帯がいないので内部の調査は出来ないため、外観調査に基づくデータしか示されてない。これらのデータに関する空き家の賃貸用の住宅の状況は[表1]のようになっている。
空き家賃貸住宅の総数は413万戸だが、そのうち被災地での従前の住まいの一般的な建て方とみられる「一戸建」は26万戸に過ぎず、大半の359万戸は共同住宅で、そのうち非木造が271万戸となっている。つまり、空き家賃貸住宅に移るということは、従前の木造一戸建とは全く違う形態の非木造共同住宅へと移ることを意味しており、住まいの環境の変化は大きい。
また、総数のうち87万戸は「腐朽・破損あり」=建物の主要部分やその他に不具合がある、となっている。これらの物件も当然手を加えれば住めると思われるが、被災者に対して早急に提供する意味では相対的には適切ではない。よって、全国の空き家賃貸住宅で仮住まいとしてすぐに提供できるのは「326万戸」と考えられる。

「3.周辺の環境」に関しては、住宅から最寄りの各種施設等までの距離が示されており、それらをまとめたのが[表2]である。被災者が被災地外の仮住まいに移るにあたっては、自動車を確保することは難しい面もあると思われるから、歩いて生活できる場所に住むのが出来れば望ましいと考え、1km(12~13分程)を徒歩圏内と仮定するならば、医療機関・公民館等・郵便局等まで(日常的な買い物もこのエリアと思われる)が徒歩圏内は9割程度だが、老人デイサービスセンターが徒歩圏内は約7割で、駅から徒歩圏内は全体の約半数となっている。
駅から遠い物件ではバス等を使えばよいとしても、医療機関・公民館等・郵便局等が徒歩圏内ではない物件(30~50万戸)は若干問題があると考えれば、空き家賃貸住宅ストックの「1割」程度は仮住まいとして適当ではないようにも思える。

このように考えれば、全国の空き家賃貸住宅の総数が400万戸だとしても、住宅の質に関する腐朽・破損の状況や、周辺環境を表す生活施設までのアクセスを考慮すれば、仮住まいとして活用可能なのは最大でもおおよそ「300万戸」程度なのではないか、と考えることが出来よう。
(2)へ続く…
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