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Apr 05, 2011

被災地外への仮住まいによる住宅再建への影響の考察

 にも書いたように、被災者を域外の住宅等で一時的に受け入れようとする動きが広がっている。被災地から実際にどの程度が移っているのかは不明であるが、域外からの情報発信や受け入れの体制は整ってきており、今後一時避難を行う被災者が増えることも予想される。
 そのような形で、被災者が被災地の自宅を離れて域外の住宅へ移った場合に、その後の住宅再建に関して何らかの影響が出ないものだろうか。その点について考えてみたい。

 まず、過去の震災の状況からすれば、被災から住宅の再建に至る一般的なプロセスは、おおよそ次の図のような形で整理できるだろう。

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 自宅が被害を受けると、まずは「避難所」へと移る。その間に自宅の「被害状況調査」が行われて建物の被害程度が「全壊・大規模半壊・半壊」などと判断され、このような被災の状況・度合いを証明するものとして「り災証明書」が発行される。この証明書に基づいて公的な支援が行われるわけだが、住まいに関してこの応急対応段階では、大きく「仮設住宅」と「応急修理」の2つの支援策があり、被災者は被害程度等に応じてどちらか一方を受けることが出来る。
 仮設住宅は、原則最長2年間を限度として仮の住まいを提供するものであり、新規に建設されるプレハブ住宅(建設型仮設)と、行政が借り上げた民間賃貸住宅(借上型仮設)の2種類がある。そして、これらへ入居できるのは原則「全壊」の被災者となっており(中越の際には降雪の問題もあり大規模半壊等も対象になった)、順次完成したあるいは借り上げた仮設住宅へと入居していく。
 応急修理制度は、大規模半壊と半壊を対象に(全壊も含む場合あり)、自宅で生活するために最低限必要な補修工事を公共負担(最大52万円)で行うものである。被災者が市町村に申し込んだ上で、斡旋を受けた工事業者に修理を依頼し、終了後に工事業者が自治体に費用を請求する手順となる。また、応急修理と自治体独自の再建支援制度を併用することで、「最低限必要な」部分以上の本復旧工事を行う場合もみられる(中越の場合はこの形も多かった)。
 仮設住宅に入居した被災者は、入居期間中にどのように住まいを再建するかを検討する。再建の方向としては、従前の敷地での「自宅の再建」(建替え)、新たな場所での「新規購入または賃貸」、及び公的に供給される「復興住宅」への入居、が主なものとして挙げられる。そして、そのような形で再建するための公的支援策の申込や調整等の手続を行い、新たな住まいを確保して、仮設住宅を後にすることになる。

 以上のような大まかな住宅再建の過程で、域外に仮住まいしていた場合には、どのような影響が出るだろうか。仮住まいといっても、「避難所」を代替する役割=数ヶ月程度の一時避難受入れ住宅か、「仮設住宅」を代替する役割=半年~2年以上の一定期間暮らす住宅かで状況は異なるので、それぞれの場合について考えてみる。
(1)「避難所を代替する住宅」の場合
 この場合には、り災証明に関わる諸手続、そして仮設住宅の入居申込や応急修理制度の申込・工事依頼等の手続を、現地から離れた地域で行わなければならない。
 り災証明については、被害度合いによって受けられる支援の度合いが異なるので、判断結果に対する申し立て(半壊とされたが本当は大規模半壊なのでは、とか)が出されて調整することも多いのだが、そのような調整を域外の避難地からやるのは少々難しい面があると思われる。
 応急修理を行う場合には、自治体への申込/業者への工事依頼/工事完了の確認/自治体への費用請求(これは業者が行うが)などの手続が必要となるため、距離の離れた地域からではうまく進めることが難しい面もあろう。特に、今回は被害が甚大で広域であるから、被災地で修理業者を確保することは結構困難になると思われ、域外に避難すればなおさら難しいとも思われる。
 その他の一般的な手続-り災証明の発行手続や、仮設住宅の入居申込-などは、郵送等でも対応は可能だろうが、被災地から離れていると、申込の方法や期限に関する情報が適切に伝わらない危険性も考えられる。
(2)「仮設住宅を代替する住宅」の場合
 こちらの場合も、住宅再建に関する各種の手続を、現地から離れた地域で行うことになる。「自宅を再建」する場合には新築(建替え)工事を行う業者の手配と調整、「新規購入・賃貸」する場合には物件探しと契約の手続、「復興住宅」への入居の場合には申込の手続などを、遠隔地から行うことにならざるをえない。これらの手続は、随時必要な際に現地に行って行えばよいのであるが、仮住まい先が非常に遠い場所になった際には、その時間的・費用的な負担は大きくなるだろう。また、(1)でも書いたように、公的な支援策に関係するような手続については、被災地から離れていると、申込の方法や期限に関する情報が適切に伝わらない危険性も考えられる。

 このようにみると、域外の仮住まいに移った場合には、その後元の土地で住まいを再建しようとした際には一定のハードルがあるものと考えられる。では、このようなハードルをクリアするには、どういう対応が必要だろうか。
 まずは、仮住まいする場所に関しては、被災地=元の居住地までの便が比較的よいところを優先して選ぶ、というのがあろう。特に移動後すぐにも現地での様々な対応が必要になる、応急修理制度によって自宅の補修を行おうと考えている場合には、その点を考慮しておくことが大切だろう。
 また、現地に信頼できる“協力者”をあらかじめ確保しておくことも考えられる。応急修理や自宅再建をするのであれば工事を行ってくれる業者を手配しておくとか、新規購入・賃貸をするのなら不動産業者との関係をつくっておくとか、である。また、公的な支援の申込等の情報についても、例えば現地に残る知人に随時情報を送ってもらうなどの形が出来れば、より安心だろう。
 などの自主的な対応と同時に、行政としても何らかの対応策を用意することが望ましい。遠隔地から郵便や電話あるいはメールなどでも申請や調整がしやすい体制をつくるとか、支援の申込等に関する情報はインターネット等で広く公開するほかに(希望者に対しては)個別に連絡を取るとかである。あるいは、現地にいる代理人による申請や交渉も可能にするなども必要かもしれない(現状の仕組みでどうなっているかは確認していないが)。

 これまでの住宅再建の支援に関しては、大半の人が被災地の避難所や仮設住宅に集まっていることを前提とした形で、情報発信や申請等の手続が組まれていたようにも思う。しかし、仮に広域的かつ個別的な一時避難または仮設的居住が行われるのであれば、情報発信や手続実施もそれに合わせた仕組みを検討しなければならないのかもしれない。このあたりは、今回の震災でも出来るだけ対応できればよいし、もしくは今後起こりうる広域災害の際には重要な課題になると思われる。

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Comments

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