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Aug 31, 2011

仮設住宅の建設地から住宅復興を考える(その1)

 8月中旬から下旬にかけて2回にわたり東北の被災地を訪問し、津波の被害を受けた市町村(の市街地)を回って来た。今回行ったのは、北は岩手県岩泉町から南は福島県南相馬市までの沿岸地域である。途中十分にはみられなかったところもあるが、おおよそ全域の市町村について、ほぼ一通り完成した仮設住宅を中心に、その周辺の状況も含めて、現地を視察して来た。
 仮設住宅の建設地というのは、行政が(早急に)確保することが可能な土地であるから、この後の復興住宅、特に災害公営住宅を供給しようとした時にも、同様の特徴や立地の土地に建てられる可能性が高いと思われる。また、被災者の立場からすれば、仮設住宅で数年間(今回は2年よりも長くなることが想定される)暮らして、その場所の生活環境に慣れれば、元の居住地に(苦労して)戻ったり他の土地へと移るよりも、仮設住宅の周辺での居住を希望する可能性も考えられる。さらに、仮設住宅が数年に渡って立地し地域の人口分布が変わることにより、業務・商業機能もそれに合わせて立地するなどして、その後の都市の構造も変わってくる可能性も考えられる。
 このように考えれば、仮設住宅の建設地をみることで、その後の被災市町村での住宅復興の姿がみえてくるのではないか、と考えたのである。

 仮設住宅をみるといっても、岩手・宮城・福島3県での総数は882地区・51423戸であり、今回回った沿岸部の市町村で計744地区もあるから、当然ながら全部をみられるわけではない。あくまでも、主なところしか見ていないのであるが、実際に現地を車で走って仮設住宅を回ってみた印象としては、立地する場所のタイプとしては、「(1)既成市街地内/(2)市街地周辺部/(3)学校グランド/(4)計画的開発地/(5)大規模公園内/(6)工業団地内」の大きく6種類があったように思う。
 以下、いくつかの仮設住宅地を例として示しながら、それぞれの特徴・印象をまとめてみる。

(1)既成市街地内
 既存の市街地内の公共用地(公園など)を活用して建てられたものである。規模としては20〜30戸程度の比較的小さいものが多いように思われるが、まとまった土地がある場合には大きな団地がつくられる。周りには普通の住宅や商店などがあるので、生活する上での環境や利便性は比較的良く、立地の面だけみれば仮設住宅であるがゆえの問題というものは少ないといえる。ただし、周囲が市街化していても工業系用途などの場合には、周辺の環境は悪く利便性も低い。
 1-1.宮古市・西町第2は、宮古駅から北に500m行ったあたりの公園につくられていて、周りは普通の住宅地、道を一本出れば県道沿いの商店街があるような地域である。元の公園にあった木々を活かした配置で、建物も北欧風?の木造なので、環境としてはなかなか良い印象である。
 1-2.釜石市・野田中央公園は、海側の中心市街地から西へと延びる細長い市街地にある。すぐそばの国道沿いには多くの商業施設が並び、利便性は高い。
 1-3.石巻市・大橋は、石巻駅の北東1km弱のところで、公共施設の建設予定地を活用している。周辺は戸建ての住宅地、近隣には大型のスーパーなどもある。この仮設団地の他に、隣接してさらに224戸が建設される予定という。
 1-4.仙台市・荒井第2公園は、仙台駅から東へ約4km程、仙台東部道路の少し西側、区画整理で開発された(と思われる)新しい市街地の中にある。インフラは整っており、商店等も多い。地元の知人によれば、利便性が高く、また海沿いの元の居住地にも近いので、こういう場所の人気は高いとのことである。
 1-5.仙台市・扇町1丁目公園も、仙台駅前からの距離は1-4と同程度だが、周辺が工業用途のため人気が低く、空き室も多いという報道がされていた。近くに住宅もないわけではないのだが、環境や利便性が相対的に悪い所は敬遠されるのであろうか。
 1-6.亘理町・中央公民館南広場は、役場や警察署が集まる町の中心的な交差点のすぐそばにある。交通量の多い県道に面するので生活環境的には問題もあろうが、商業施設なども周辺には多く利便性は高いといえる。

1__ 1___2
(1-1.宮古市・西町第2[20戸]、1-2.釜石市・野田中央公園[36戸])
1___3 1___4
(1-3.石巻市・大橋[316戸]、1-4.仙台市・荒井第2公園[24戸])
1___5 1___6
(1-5.仙台市・扇町1丁目公園[131戸]、1-6.亘理町・中央公民館南広場[95戸])

(2)市街地周辺部
 既存の市街地や集落に隣接・連担する地域、いうなれば市街地の“縁”に建てられており、公共用地や空き地、遊休農地などを活用しているとみられる。規模としては(1)既成市街地内よりも大きく、数十戸単位という印象である。市街地とは一応連担しているので、商店などは市街地内のものを利用出来るわけであるが、距離がある分不便な面もあると思われる。
 2-1.岩泉町・小本は、西からの国道が市街地に入る入口のあたりに立地している。市街地の中心部までは1km程度という感じである。
 2-2.山田町・山田は、谷沿いに内陸へと広がる既存集落の間に点在しており、公的施設の敷地の一部や民有地を使って建てられている。被害を受けた市街地から最も奥の仮設までの距離は3km程であろうか。細い1本道を内陸へと進んでいくと、道の両側に仮設が並んでいる感じである。
 2-3.大槌町・大槌も、2-2と似たような形で、谷に沿って内陸へ向かう県道沿いに仮設住宅が並ぶが、被災した中心市街地からの距離は6〜7kmにも及んでおり、より奥まで続いている。既存の住宅も少なく、写真にあるように田んぼの中に建っている仮設が目立つ。戸数も多いので、市街地に向かう車で朝夕は道路が混雑するのではないか…とも思える。
 2-4.南三陸町・入谷中の町は、志津川の市街地から北西に3km程行った入谷という地域にある。緑の多い農村という感じのところであり、この他にもいくつかの仮設が立地している。ここに住むのは入谷地域の人かそれとも志津川等の人か分からないが、後者であれば海沿いの志津川とは全く異なる環境で暮らすことになるのだろう。
 2-5.女川市・石巻バイパス用地は、女川市の仮設住宅を石巻市内に建設したもので、写真では分かりにくいが、道路沿いの細長い敷地に仮設住宅の建物が一列になって数百m並んでおり、ある意味壮観な風景である。周囲は水田なので、必ずしも「市街地周辺部」とはいえない面もあるが、道路に沿っていくつかの集落はあるので、一応連担しているといえるだろうか。
 2-6.南相馬市・前田団地は、鹿島という駅から1km程のところにあり、市営住宅に隣接して建てられている。駅から広がる住商混在の地域の端にあるが、道路を挟んだ反対側には既存の集落が続くので、市街地内と言えなくもない。

2__ 2___2
(2-1.岩泉町・小本[84戸]、2-2.山田町・山田[7カ所計218戸])
2___3 2___4
(2-3.大槌町・大槌[10数カ所計756戸]、2-4.南三陸町・入谷中の町[12戸])
2___5 2___6
(2-5.女川市・石巻バイパス用地[236戸]、2-6.南相馬市・前田団地[81戸])

その2へ続く…)

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