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Sep 06, 2011

仮設住宅の建設地から住宅復興を考える(番外編)

 ここまで岩手・宮城・福島の津波被災地域の仮設住宅を紹介してきたが、福島の浜通り南部(いわき等)や中通りの仮設は、それらとはまた違う状況をみせる。津波で被害を受けた(原則)自地域の住民のための仮設だけではなく、原発災害で避難・転出を余儀なくされた地域の住民を受け入れる仮設が多くを占めるからである。そこで今回は、9月4日に視察してきたいわき市周辺の仮設の状況を紹介したい。

 前述の通り、いわき市の仮設は原発避難地域の住民を受け入れるため、仮設団地の規模が大きいのが特徴である。それだけの規模の仮設住宅を確保するために、市街地内の規模の大きな空地の他に、比較的広い敷地の取れる郊外部の土地、先の立地タイプで言えば(4)計画的開発地や(6)工業団地内が多くみられる。

 四倉工業団地[103戸、主な入居市町村:広野町]は、四ツ倉駅の北西方向約3km、久ノ浜駅の南西約3kmの山の中、いわき四倉中核工業団地の最も奥まった場所にある。工業団地内には商店等はなく、前述の両駅周辺の市街地まで出ないと買い物は出来ないと思われる。木造仮設がいまだ建設中であった。
 四倉町鬼越[250戸、主な入居市町村:広野町・川内村 ]は、四倉駅のすぐ西側に面している。が、駅の出口は東側のみと思われ、駅から直結しているわけではない(と思われる)。工場用地または資材置き場などと思われ、敷地はかなり広い。そのうちの一部を仮設住宅にするものと思われ、木造仮設を建設中であった。線路の反対側とはいえ市街地に近く、また敷地正面にコンビニもあるなど、比較的利便性は高い。
 上荒川[241戸、主な入居市町村:楢葉町]は、いわき駅から南へ2km程、明治団地という戸建住宅地の奥、住宅地を見下ろす高台に位置する。団地に接する道路沿いにはスーパーや家電量販店などが並んでおり、高台で多少アクセスは不便かもしれないが、団地の住宅とほぼ同じ利便性といえよう。ここもまだ建設中であった。
 好間[62戸、主な入居市町村:富岡町 ]は、常磐道いわき中央ICに近い住宅街の中、公営住宅(と思われる)の裏側の敷地にある。近くにスーパーなどもあり、生活に必要な機能は近隣に揃っているとみられる。
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(左:四倉工業団地の木造仮設、右:四倉町鬼越の木造仮設の敷地全景)
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(左:上荒川の仮設=丘の上にある白い建物、右:好間の仮設=公営住宅に面する)

 好間工業団地は、常磐道いわき中央ICの北側にある工業団地で、工場が立ち並ぶ中に第一[156戸]と第二[84戸、いずれも主な入居市町村:大熊町]がある。どちらも工場の敷地の一部にあるようにもみえ、工場に面しているような立地である。工業団地内には商店等はなく、車で市街地まで降りないとならないと思われる。
 常磐迎第一[62戸]と第二[78戸、いずれも主な入居市町村:広野町]は、湯本駅近くの市街地内にあり、広野町仮役場も仮設から2km程の高台に位置している。第一は県道に面した敷地にあるプレハブの建物、第二は市営住宅(と思われる)の奥の敷地にある木造仮設である。

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(左:好間工業団地第一=工場と同一敷地にみえる、右:好間工業団地第二)
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(左:常磐迎第一、右:常磐迎第二の木造仮設)

 南台[259戸、主な入居市町村:双葉町]は、勿来駅から北西5km程の山中にあるニュータウン内にある。いわき市内にある仮設としては、最も市街地からは離れた立地であろう。住宅団地と工業団地で構成される新規の造成地とみられ、仮設は両者のちょうど間に位置する形である。住宅団地には多数の戸建住宅が建っているが、周辺に商店等は確認出来ず、どこで購買を行っているのかは不明であった。
 泉[220戸、主な入居市町村:富岡町]は、泉駅に面して位置している。南側は線路に接し、北側は戸建住宅地であり、市街地の中にあるといってよい。駅南側にはスーパー等も揃っており、利便性は比較的高いといえよう。

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(左:南台の仮設団地、右:泉の仮設団地)

 最後に、いわきニュータウン内には多数の仮設住宅がつくられている。URの開発による(と思われる)戸建住宅団地であり、中心には大きな都市公園があり、中央の大通りに面しては規模の大きな商業施設もある。そのニュータウン内の未分譲の住宅・業務等用地、及び公園等の敷地を使って、仮設住宅が建設されているようである。
 高久第3[48戸]と第4[103戸、いずれも主な入居市町村:広野町 ]は高台の業務向け分譲用地に建てられている。高久第6[17戸、主な入居市町村:楢葉町 ]や鹿島[18戸、主な入居市町村:広野町 ]は、住宅地内の公園用地と思われ、戸建住宅に直接面している。高久第8[123戸、主な入居市町村:楢葉町 ]は公園の来場者向け駐車場につくられている。
 最も特徴的で規模も大きな高久第9[202戸]と第10[200戸、いずれも主な入居市町村:楢葉町]は、木造仮設を中心としている(確か筑波大の安藤先生設計のものではなかったか)。分譲中の宅地を囲むようにして両仮設住宅が配置されており、木造の建物が整然と並ぶ様は他の仮設団地とは大きく異なる印象を受ける。

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(左:高久第3と第4の遠景、右:高久第6)
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(左:鹿島、右:高久第8)
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(左:高久第9と第10の遠景、右:高久第10の南側)
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(左:高久第10の木造仮設、右:高久第9の木造仮設)

 このようにみれば、市街地内に立地する仮設団地であれば生活利便性は高いが、郊外部の特に工業団地内となると市街地までの距離も遠く、周辺からも独立しているため、日々の生活を送るには結構大変な印象も受ける。
 原発避難地域の住民が移ってくるとの視点から考えると、数百戸規模がまとまった戸数が一団地で確保されており、従前の地域コミュニティがそのまま移ってこられる面はある。ただし、周辺地域との連続性・一体性があまりないことから、仮設団地内で逆に“閉じて”しまう面もあるのかもしれない。また、団地の規模が大きい分、画一的なつくりのマスハウジングという印象を受ける部分もあり、このような住環境に避難してきた住民が慣れるのが難しい面もあろう。
 市街地及びニュータウン外の仮設はまだ建設中のところも多いことを考えれば、入居が始まるのに合わせて各種の支援を実施する体制も用意して、自家用車での移動が難しい者や住宅内で孤立してしまいがちな者への支援を入居と同時にはじめられるようにすることも必要かもしれない。

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Sep 02, 2011

仮設住宅の建設地から住宅復興を考える(その3)

その2から続く…)

(5)大規模公園内
 主として市街地の郊外にある、運動公園等の公共用地を活用してつくられた仮設である。一定の広さの敷地があるので、仮設住宅団地の規模も数百戸単位と比較的大きい。前述の通り市街地の中心部からは離れているので、買物等の移動には車は必須であり、その意味で生活の利便性は低い面もあるが、規模が大きい分、団地内に仮設の店舗をはじめとする各種の都市機能が設けられる場合もあり、となれば団地内で完結した形で生活が出来るのかもしれない。
 5-1.宮古市田老・グリーンピアみやこは、田老の市街地の北6km程のところにある、総合的な運動公園である。この他に田老近辺に仮設住宅はみられないので、おそらくここに集約されているのであろう。グランドや駐車場に仮設が建てられているほか、体育館も何らかの用途で使われているようであり、また駐車場の一角にはテントを使った仮設の商店街?もみられた。周辺には店舗などはなかったようなので、仮設団地内にこのような昨日が必要なのだろう。
 5-2.釜石市・平田総合公園は、釜石の市街地から4km程南に位置しており、東京大学が提案したコミュニティ型仮設がつくられており、またサポートセンターも設けられている。私が訪れたのはもう夕方から夜になろうという時間だったので、仮設の玄関を向かい合わせ屋根をかけたコミュニティスペースには誰もみかけなかったのだが、昼間や休日などはここで人が交流しているのだろう。近辺には何もなく車で市街地に出るしかない場所だけに、こういうスペースが重要なのかもしれない。
 5-3.気仙沼市・五右衛門ヶ原運動場は、気仙沼の市街地中心部からは5km程西に位置し、国道から上がった高台にある。周辺にはコンビニ等の店舗も(確か)みられず、住宅地内にも店舗等の施設はみられなかったと思うので、生活には自家用車が必要不可欠なのだろう。コミュニティバスのようなものも走っていたように思うが。
 5-4.南三陸町・平成の森は、町の東部の市街地である歌津から一つ丘を登ったあたりにある。国道まで出ればコンビニ等があり、必要最低限の生活必需品は比較的近隣で確保出来ると考えられる。公園のクラブハウス等を活用したボランティアセンター等も設けられており、利便性の低いところである分、様々な支援が行われているものと思われる。
 5-5.女川町・運動公園野球場は、現在コンテナを活用した3階建ての仮設住宅を建設中である(おそらくこれだろう)。この他に、隣接する敷地に154戸のプレハブ仮設が既につくられており、また仮設の役場もこの運動公園内にある。なお、復興住宅もこの公園内の運動場を壊してつくられる計画だとのことであり、なくなった運動場は津波被害を受けた少し低いところに新たに建設される計画があるという。
 5-6.東松島市・矢本運動公園は、東矢本駅の南1km弱の所にあり、町の中心軸であろう国道から一歩入ったところにある。仮設団地内には集会所以外の施設はみられないが、すぐそばの国道まで出れば商店等は多数あり、利便性は比較的高いと思われる。

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(5-1.宮古市田老・グリーンピアみやこ[3カ所計407戸]、5-2.釜石市・平田総合公園[2カ所計282戸])
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(5-3.気仙沼市・五右衛門ヶ原運動場[3カ所計310戸]、5-4.南三陸町・平成の森[246戸])
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(5-5.女川町・運動公園野球場[189戸]、5-6.東松島市・矢本運動公園[371戸])

(6)工業団地内
 (4)計画的開発地とも若干立地が重なるが、工場用地として新たに開発された土地の空き地を活用するものであり、数百戸規模の大きな仮設団地が建てられる場合がみられる。既存の市街地からは結構は慣れた場所にあり、周囲にも商店等は少なく、車での中距離の移動が不可欠と思われるが、(戸数や人口に比べて)道路が細いなどインフラが不十分なところもみられる。
 6-1.石巻市・トゥモロービジネスタウンは、前出の4-4.石巻市・南境地区に隣接した業務機能向けの団地で、(おそらく買い手/借り手がまだいなかった)空き地に多数の仮設がつくられている。
 6-2.石巻市・須江工業団地道路用地は、石巻駅からは北西に6〜7km離れた内陸の高台にあり、開発地の東側は工業団地、西側は住宅団地となっており、その工業団地の一角に建てられている。この工業・住宅団地内には、その他に2カ所計254戸(200戸が工業団地側、54戸が住宅団地側)の仮設が建つとなっている。近隣に商店等はみられないが、住宅団地の住民と同様に車で移動して買物等をするものと考えられる。
 6-3.相馬市・大野台は、相馬駅の北西5kmほどの工業団地内にある。すでに工場が建つエリアもあるが、まだ空き地であった南側のエリアに9カ所計約1000戸の仮設住宅団地が位置している。最寄りのコンビニまでも2kmは距離があり、どうしても車で動かざるをえないと思われるが、工業団地内の道路は整備されているものの、中心市街地と結ぶ道路は古い細いものしかなく、交通の面では不便さもあろう。訪れたのはちょうど夕方だったので、軽自動車がひっきりなしに出入りしており、混雑の発生や事故の危険性なども問題になるのでは、と思われた。
 6-4.相馬市・柚木工業団地は、6-3とは逆に相馬駅の南東側7〜8kmのあたりにある。主要な幹線の国道から1本中に入った道路から、さらに高台へと上がったところに位置しており、交通の便はよいとはいえない部分もある。国道まで出てもコンビニ等の店舗は少なく、生活には車で一定距離を移動する必要があると思われる。

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(6-1.石巻市・トゥモロービジネスタウン[811戸]、6-2.石巻市・須江工業団地道路用地[21戸])
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(6-3.相馬市・大野台[9カ所計1013戸]、6-4.相馬市・柚木工業団地[220戸])

(その4へ続く…)

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Sep 01, 2011

仮設住宅の建設地から住宅復興を考える(その2)

その1から続く…)

(3)学校グランド
 小・中学校や高校のグランド部分に仮設住宅を建てたものである。三陸地方では学校は周辺よりも一段高い土地にある場合が多いようで、結果として高台に仮設がある形となっている。また、学校跡地もいくつかみられており、廃校になった(であろう)敷地が活用されている。学校は市街地から通える距離にあるので、仮設住宅の利便性も比較的高いといえるが、急勾配の坂を上らねばならないようなところもあり、高齢者などには少々厳しい部分もあるかもしれない。
 3-1.大船渡市・立根町宮田は、市街地中心部から2km程北の高台にある中学校のグランドを使っている。手前に見えるテニスコートは残されており、そちらを体育の授業で使うのであろう。国道から1本奥に入ったあたりで、周辺にも住宅が点在しており、交通や買物の便はそう悪くはないと思われる。
 3-2.陸前高田市・高田第一中学は、津波被害を受けた平地のすぐ北の高台のちょうど縁部分に位置する。ここはグランドの大半が仮設に使われている。北側には以前からの集落(と思われる)と新興住宅地(エコタウン鳴石)があり、このあたりには仮設の店舗や病院などもつくられている。
 3-3.気仙沼市・鹿折中は、津波とその後の火災で被害の大きかった、港の北部の鹿折地区の北東の高台にある。市街地からは細い道を登っていく形であり、被災市街地の道路も十分には復旧していないので、交通の便はあまりよくないと言わざるを得ない。ここの場合はグランドは半分程残しているようである。
 3-4.南三陸市・志津川中は、志津川地区を見下ろす奥まった高台に位置する。高台はかなりの高さであり、急勾配の道路(か階段)を登らなければならず、成人男性でも登るのは一苦労という印象を受ける。降りた所には仮設のコンビニが出来ているが、移動は車が中心にならざるを得ないのではないか。ここもグランドの半分を使っており、残りの部分で体育の授業をする様子がみられた。

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(3-1.大船渡市・立根町宮田[120戸]、3-2.陸前高田市・高田第一中学[200戸])
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(3-3.気仙沼市・鹿折中[120戸]、3-4.南三陸町・志津川中[102戸])

(4)計画的開発地
 海沿いの既存市街地から少し離れたあたりの郊外部、新たに開発された(とみられる)ニュータウンや区画整理地内で、公園や未利用地を使う形で仮設住宅が建てられている。このような計画的開発(住宅)地は多くの市町村でみられており、新規宅地を開発していたからこそ活用出来たといえよう。山の中の不便なところもあるが、開発地内やその周辺に商業施設が集まっている場合もあり、後者では生活利便性が高いと思われる。
 4-1.宮古市・西ヶ丘は、海に面した中心市街地から3km程西側の内陸高台につくられたニュータウン(といってよいか)であり、その中の公園や分譲予定地を使う形で、6カ所計120戸の仮設がつくられている。ニュータウン内は学校やスーパーなどもあり、生活環境は十分整っているといえる。
 4-2.南三陸町・沼田は、仮設庁舎やボランティアセンターがあるベイサイドアリーナと同じ高台にある戸建住宅地であり、その北端に面して仮設が建てられている。この高台には震災後に都市機能が集まっており、仮設住宅のすぐ北側には仮設店舗群があり、またさらに北側の商工団地にもいくつかの商業業務施設が並んでいる。
 4-3.石巻市・あけぼの南公園は、石巻駅から北西に3km程、戸建住宅と集合住宅が建ち並ぶ向陽という地区の中にある。仮設が造られた公園の周囲は戸建住宅地で、地区内には商業施設も多く、さらにすぐ近くの国道に出ればイオンをはじめとする沿道型の大型店舗が並ぶ。
 4-4.石巻市・南境地区は、石巻駅の北側2km程、旧北上川を超えたところの総合運動公園に面する地区で、区画整理で開発された(と思われる)戸建住宅地であり、ビルドアップしていない宅地等を使って仮設が建てられている。前出の運動公園や、周辺のトゥモロービジネスタウンという業務地域も含めて、全部で2千戸弱の仮設住宅が集まるエリアでもある。
 4-5.東松島市・グリーンタウン矢本は、市役所から北西へ3km程のところにある新興戸建住宅地+工業団地で、その端部分のまとまった土地に2カ所計520戸の仮設がつくられている(その意味では(6)工業団地内の要素もある)。周辺にはコンビニ以外には商業業務機能はないようだから、中心部まで車で向かうことになるのだろう。
 4-6.七ヶ浜町・湊浜は、おそらくしばらく前に高台につくられた住宅地とみられ、古い戸建住宅もみられるような地域である。写真はその中の公園を使う形でつくられた仮設であり、その他にもう1カ所の仮設がある。なお、七ヶ浜にはより最近に民間が開発して(とみられ)商業施設も集まる住宅地もあるのだが、そちらの中には仮設はつくられてはいない。

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(4-1.宮古市・西ヶ丘[6カ所計120戸]、4-2.南三陸町・沼田[40戸])
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(4-3.石巻市・あけぼの南公園[11戸]、4-4.石巻市・南境地区[5カ所計65戸])
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(4-5.東松島市・グリーンタウン矢本[2カ所計520戸]、4-6.七ヶ浜町・湊浜[17戸])

その3へ続く…)

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