Jul 06, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:比較考察編

 これまでみてきた各党のマニフェストの内容を比較考察してみたい。考察で扱うのは、住宅政策と同様に、都市計画に関して一定の記述がみられた、民主党自民党公明党共産党社民党の5党とする。なお、前述の通り民主党のマニフェストには記載は少ないのだが、与党の政策を扱わないわけにもいかないので、昨年のマニフェスト及び「政策集INDEX2009」の内容が現在も生きているものとみなして、考察を行う(2009年の記述部分は薄いグレーとしている)。
 これら以外の党では、都市計画の記述は非常に少ないのが実情である。住宅政策と同様に、党の規模が小さいと、ここまで手が回らないということなのかもしれない。その中でも、新党改革の「超高層縦型都市」というビジョンは、その内容の妥当性はともかくとして、注目に値するといえよう。

 さて、住宅政策の場合とは異なり、各党の都市計画・都市政策に関する基本的なスタンスを示したような部分はみあたらないので、個々のテーマ毎に各党の主張をまとめてみる。

項目 民主党 自民党 公明党 共産党 社民党
法制度 法体系を抜本見直し、都市計画法を全ての地域を対象とする「まちづくり法」に再編 (記載なし) (記載なし) 住民主体の計画づくりや許認可制度を軸にした「都市計画法」の改正や「建築基本法」の制定 建築主・所有者の財産権と周辺の環境権との調整の原則を示す「建築基本法」の制定
都市構造 (記載なし) コンパクトで人や環境に優しいまちづくりを推進 コンパクトシティを推進、歩いて暮らせる生活圏の形成 (記載なし) (記載なし)
都市再生・開発 必要な政策を複合的・集中的に実施する総合特区を展開し、地域を再生 サステナブル都市、国際コンテンツ拠点等を可能とするため、「グローバルトップ特別区」を創設 優良な民間都市開発を支援、民間資金やノウハウを活用し都市再生関連施策を推進 (記載なし) 公共投資や社会資本投資で得られる開発利益を自治体に還元する制度を創設
商業振興 複合建築物の建設などにより「商住一体のまちづくり」を推進 空き店舗の有効利用やアーケード・駐車場・駐輪場の整備等、商店街再生の取組へのソフト・ハード両面での支援 中心市街地活性化法等を抜本的に見直し、ソフト・ハード両面にわたる商店街への総合的な支援の拡充 「大店・まちづくりアセスメント」を義務づけ、「まちづくり3法」の抜本改正 (記載なし)
まちづくり 情報公開と市民参加を徹底した地域主権型のまちづくりのシステムを、都市計画法や建築基準法を抜本改正することで構築 (記載なし) (記載なし) 都市再開発や土地区画整理事業などまちづくりへの住民参加をすすめ、「住民が主人公」のまちづくりを支援 地域の合意を重要視して街づくりを進めようとする自治体や市民の努力を重視
コミュニティ 地域住民同士が互助互恵の精神で行う奉仕活動を促進 地域に根ざした活動を行う団体を支援する「コミュニティ活動基本法」を制定、「地域社会を維持する事業」に取り組む地域マネジメント法人の育成を推進 商店街を地域コミュニティーの顔として住民が憩える場所に再生、社会的課題をボランティアではなくビジネスで解決する活動(社会的企業)を推進 (記載なし) 郵便局ネットワークを地域コミュニティの再生のための生活拠点として活用、地域通貨・福祉事業とワーカーズコレクティブ・コミュニティビジネス等の自主的努力をバックアップ
景観・緑地 まちづくりと一体の多様な観光資源を活かした魅力ある観光地づくり、屋上緑化と美しい都市景観をつくる「都市緑化法(仮称)」の検討 無電柱化の集中実施や景観に配慮したまちづくりなどによる魅力有る観光地の整備 市街地幹線道路、歴史的町並保全地区、観光地などの無電柱化事業 鞆の浦の貴重な景観を維持するため、無謀な計画を中止 「歴史的環境」 (すぐれた「町並み」や「景観」など)を守り再生、虫喰い状態の土地を積極的に買い上げて緑の空間を確保
農地 一筆毎に規制する方式からゾーニング規制(地域別規制)の方式を基本とする制度に転換、農業的土地利用と非農業的土地利用とを一体化した「都市・農村地域土地利用計画制度」を創設 都市農業の継続と農地保全が図られるよう、今後の都市計画制度見直しの中で法律、税制などの整備と振興施策を充実 都市農業が持続可能なものとなるよう都市農業振興法の制定を検討、市民農園・農業体験農園の整備を推進 都市内の農業と農地の存続を否定する現行の都市計画制度を見直し、農業を都市づくりの大事な柱に位置づけ 都市農業の保全・振興

 「法制度」に関しては、言及している3党とも改正や新規の制定を位置づけている。2009年の民主党の「まちづくり法への再編」がより具体的であるが、地方分権・住民主体の時代を踏まえた変更が必要という点では一致しているといえよう。
 「都市構造」に関してはコンパクトシティという考え方は共通、「都市再生」も特区による地域の創意工夫の推進という点は同じようである。「商業振興」では商店街の再生に主眼が置かれ、いずれも様々な施策によって空き店舗の活用などを進めようとする発想である。その中で公明党と共産党はまちづくり3法の抜本改正という制度的な対応も位置づけている。
 地域単位の「まちづくり」については、地方分権で基礎自治体に権限を委譲するとともに、住民の主体性を重視する考え方が明確になっている。合わせて「コミュニティ」施策でも、地域単位の独自の社会的活動やコミュニティビジネスを支援するというスタンスがみられる。
 「景観・緑地」に関しては、歴史的街並みを活かすという点は共通しているが、どちらかといえば観光の観点からの発想となっているようである。緑地の保全・創造では民主党(の2009年版)と社民党では多少踏み込んだ意見が示されている。「農地」についても、都市内の農地を活かすという点で各党とも共通している。

 このようにみれば、法制度の改正・制定をどこまで打ち出すかという点で各党の違いはみられるが、基本的な方向はほぼ共通しているといえる。「地方分権」のもとで「地域単位」での行政・住民・NPO等の取り組みを中心に位置づけ、「エコ」で「コンパクト」かつ活気のあるまちをつくるために、必要に応じて特区などの特別な支援策を行う、ということであろう。となれば、都市計画・都市政策は、選挙における争点・論点とはあまりなりえないと考えられよう。
 ここまで各党の違いがみえにくいのはなぜだろうか。都市政策のあり方はもう議論されつくされていて方向性が固まりつつある、と見ることも出来ようが、各党が独自の都市像や政策を十分に検討していないのではないか、とも思えてくる。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Jun 29, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:その他政党編

 住宅政策編と同様に、残る4党(国民新党・みんなの党・新党改革・たちあがれ日本)のマニフェストについて、都市計画関係の内容を整理する。

-----
■国民新党
 「2010政策集」の中で、都市計画やまちづくりについて直接的に触れているものは見あたらない。関連がみられるものは、防災や公共事業、コミュニティに関する、以下の内容だろうか。

Ⅰ 国土・国益を守り抜く-伝統・誇り・価値の継承
9.防災事業の一層の強化
○大地震や異常気象など予期せぬ災害から、国民の生命、財産を守る為、国民新党は学校、病院の耐震化の推進、電線地中化、河川整備や砂防事業の一層の充実を図ってゆきます。
Ⅱ 経済成長による財政健全化-景気回復に全力投球
7. 「いきいき地方復活交付金制度」の新設
○地方経済の再生の為、地方交付税を一層充実させ、更に「いきいき地方復活交付金制度」(年間3兆円程度)の新設を図ります。本制度により懸案となっている学校・病院など公共施設の耐震化、電線地中化、上下水道・浄化槽の施設更新、木製ガードレールの設置など、地域密着型公共事業への転換で地方を元気にします。
Ⅲ 郵政改革のゴールは本物の地域力-安全・成熟の国土形成
6.郵政施設を拠点とした防災、介護サービスの提供
○高齢化が進む地方において、郵便局を核とした防災情報の提供や高齢者の安否確認、「かんぽの宿」 等における介護サービスの提供を行い、地域における安心・安全の拠点化を推進します。
Ⅳ 小泉・竹中改革の抜本的見直し-格差の解消、地域の再生
5.中高齢者層の社会参加を推進
急速に少子高齢化社会が進み行く今日、これまでの我が国の成長、地域の発展を支えてこられた高齢者の方々の社会参加のあり方が問われています。国民新党は定年制度の延長、シルバー人材の活用、地域コミュニティへの支援など を一層推進し、我が国を支えてきた高齢者パワーで活力ある地域社会を作ってゆきます。

 個別の事業や政策が並んでいるわけだが、これら全体をみても、どういう都市・地域像をイメージしているのかは、ちょっと見えにくい。

-----
■みんなの党
 「アジェンダ2010成長戦略」の中で、都市計画・まちづくりに関連するとみられる内容は、以下の3項目くらいか。

Ⅱ 世界標準の経済政策を遂行し、 生活を豊かにする!
1.未来を切り拓く「経済成長戦略」を遂行する
⑭「全額税額控除」の導入等寄付税制の拡充などによりNPO活動等の公益活動を活性化。
Ⅲ「地域主権型道州制」 の導入で格差を是正する!
1.地方自治体へ3ゲン(権限・財源・人間)を移譲し、地域のことは地域で決める
④地方自治体が行う事務に対する国の「義務付け・枠付け」を廃止し、自主立法権、課税自主権、住民参加などを充実し地方政府を確立。
3.平成の農地改革で農業を地域の基幹ビジネスにし、食糧自給率を向上させる
①米の減反政策(生産調整)を段階的に廃止するとともに、農地転用規制( 「ゾーニング」=土地利用規制の導入など)を徹底、耕作放棄地の有効活用を図る仕組みを確立。

 一つ目はまちづくりには関係してくるだろうが直接的なものではなく、二つ目は条例による自由な規定を認めるものと考えれば、都市計画制度の運用にも係わってこよう。三つ目は、農地という土地利用をゾーニングの中で位置づけると読むならば、都市計画制度に踏み込んでいるといえよう。

-----
■新党改革
 「新党改革の約束2010」では、「住宅・都市政策」という項目が立てられているが、中身は住宅の話が中心であるので、内容の紹介は住宅政策編に譲る。この他に「超高層縦型都市」という項目があり、内容は以下の通りである。

計画11:世界最高の暮らし
□超高層縦型都市
○東京や大阪は世界的な大都市ですが、先進国の大都市との違いは、容積率です。日本で最も容積率が高いのは、東京都港区の300%。これは、平均3階建てになることを意味します。一方、ニューヨークのマンハッタンでは、この数字は1400%。日本は国土が狭いにも関わらず、有効に土地利用を出来ていないことが分かります。
○土地利用を高め、生活を充実させるために、都市圏の中心部を、超高層縦型都市に大改造します。マンハッタンのように、超高層ビル、超高層マンションが林立する街へ。高層化すれば緑地も増やせるので、ヒートアイランド現象を和らげることができます。一つの土地利用者が多くなるので、住宅価格もぐっと安くなります。多くの人が、割安に都心部に住居を構え、1時間以上もの通勤が必要なくなります。

 ここまで具体的な都市の空間イメージをマニフェストに書くというのは、大変特徴的である。イメージとして若干古いという感じがするのは否めないが、それでもここまで明確に書くのは(この主張に賛同するかどうかは別として)踏み込んでいるものと評価できよう。
 この他、都市計画・まちづくり分野に関係しそうな内容としては、以下の大きく2つの項目が挙げられる。

改革その2:日本経済の復活
計画6:地方分権
□一国二制度、大阪特区構想
○廃県置州による地方分権の実現は、憲法改正を行わなければ実現に踏み切ることはできず、これには、相当な時間を要します。
○本格導入の前段階、革命的な実験の場として、特区を設けます。地域が責任を持って、独自のルールに沿った制度・行政モデルを容認し、新たな国の活性化モデルとする特区です。これは、日本国内に2つの制度があるということで「一国二制度」と言えます。
○この第一弾として、知事が賛同している大阪府で実践します。「大阪特区」では、税率や規制も大阪府が決めます。「大阪特区構想」を通じて、大阪を元気にし、その元気を他の地域にも伝播させ、日本を元気にします。
改革その4:安心して暮らせる社会
計画9:70歳現役社会
□長屋の声かけコミュニケーション、祖父母力の強化
○地域再生の鍵は、かつての長屋が持っていた「声かけ」によるコミュニケーションの復活、おじいちゃん、おばあちゃんによる地域再生(祖父母力の強化)だと考えています。母親が忙しくて夕食の準備が出来ないときには、近所の家で食べさせてもらう。子供が夕方歩いていると、ご近所さんが帰るよう促してくれる。買い物に行けない高齢者のために、隣家の子供がお使いに行く。おじいちゃん、おばあちゃんがパトロール隊を結成し、孫の安全を守る。
○この長屋の声かけ、祖父母力をキーワードに、地域コミュニティを再生させる原動力とします。

 前者は「大阪」としているところに若干政治的な意図も感じるが、特区で「一国二制度」を実験するという姿勢は、やはり踏み込んだものといえよう。後者は地域コミュニティの話で、既に各地で取り組まれている話で新しくはないが、それでもこのような形で書くところは特徴的である。

-----
■たちあがれ日本
 「政策宣言2010」の中で、都市計画・まちづくりに直接言及したものはない。関連がみられるものとしては、以下の2項目が挙げられよう。

【5】強いふるさと
1. 山と海を守り、里を守り、治安を守る
②自然共生型のエコ公共事業
・自然と共生した世界最先端の美しい国土をつくっていくことが日本の新たな強みです。道路財源の一部を「環境税」に振り替え、その税収を活用して新たな自然回復事業、つまり「エコ公共事業」を全国で実施していきます。
⑥地域力で「空き交番」なしへ
・安全な社会のために「空き交番」全廃へ、警察官増員とともに、自治会、消防団、NGO、学生など「地域力」をフル活用して対応していきます。

 前者は具体的にどのようなものかのイメージは掴みかねるが、後者は「交番」を軸に地域力を高めるとの発想であり、社民党や国民新党が掲げていた「郵便局」を核とした地域再生と通じるものがあろう。

-----
 以上見てきたが、やはり都市計画に直接言及した政策はほとんどないのが実情のようである。唯一新党改革が具体的な都市像に触れているが、その他ではどういう都市を目指そうとするのかのイメージもみえてこない。そのあたりは、各地域で決めていけばよいということなのかもしれないが。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Jun 28, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:社民党編

 続いて、社民党の都市計画編を。
-----
■社民党
 住宅政策のところでまとめたように、社民党では「ダイジェスト版」と「総合版」の2つを出している。総合版を整理したのがダイジェスト版だが、都市計画関係については両者の間には微妙に違いがあり、総合版に書いてあるからといってダイジェスト版に項目が挙がっているわけでは内容もみられる。

 まず「ダイジェスト版」であるが、都市計画に直接関連するような項目はみられない。あえて挙げるとするならば、まちづくりや開発に関係する、以下の内容だろうか。

再建5:地域
○地方に権限と財源を移し、真の「地方分権」を推進します。
○NPO法・NPO税制を抜本改革し、NPOを支援します。
再建7:みどり
○情報公開や住民参加の徹底で、無駄なダムや道路などの公共事業を徹底的に見直し、乱開発を見直します。

 一方の「総合版」では、「再建5:地域」などにおいて、都市計画に関連する以下の内容がみられる(長文のため一部省略)のだが、「ダイジェスト版」にはこれらの項目は全くみられない。必要な政策としては位置づけるが、重要視はされていないということであろうか。

再建5:地域
2.地方再生
○公共投資や社会資本投資によって得られる開発利益を自治体に還元する制度を創設します。
○地域社会全体の財産としての「歴史的環境」 (すぐれた「町並み」や「景観」など)を守り、再生します。産業遺産を観光資源として活用します。民謡・民話・生活技術など民衆文化の担い手に対する助成・育成策を強化します。
○建築の質を高め、社会を豊かにするため、建築物を社会資産とみなし、建築主・所有者の財産権と周辺の環境権との調整の原則を示すような「建築基本法」の制定をめざします。
○地域の合意を重要視して街づくりを進めようとする自治体や市民の努力を大切にします。この間の規制緩和が地下室マンションや超高層建築物等を可能にし、住環境破壊を招いています。まちづくりに係る法制度を分権・自治の観点で見直すとともに、条例で的確な規制ができるようにします。
○過疎地域の振興を図るとともに、限界集落(住民の減少と高齢化がすすみ、6 5 歳以上が半数以上になり、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落)をはじめとする集落対策等を総合的に推進するため、新たな過疎対策法を制定します。
9.災害対策
○中心市街地の再開発、住宅密集地の再開発でも虫喰い状態の土地を積極的に買い上げ、都市公園整備、緑の空間の確保を優先課題として取り組みます。電気・電話等の系統の多重化、避難場所や消防水利の整備、オープンスペースの活用等による災害に強いまちづくりを計画的に推進します。災害時の情報システムの整備、食料・医薬品の備蓄、地震観測・研究の強化をすすめます。
○市街地での「無電柱化」率は一割強にとどまっていますが、景観を改善するだけでなく、歩行者や自転車が通行しやすくなり、交通事故を防ぐ効果もあることから、電線の地中化、共同溝の整備も加速します。
○洪水ハザードマップなどの防災マップの普及と住民参加の防災・救援計画の策定を促進します。 「ゲリラ豪雨」災害に対応できるよう、都市水害対策を強化します。 「雨水浸透ます」を各住宅の敷地に埋め込み、水害対策とともに、都市化で枯れた地下水の再生にもつなげ、 池や川をきれいにします。
再建6:農林水産業
1.農業
○都市農業(農業産出額と耕地面積の3割を占める)の保全・振興を強め、新鮮・安全な農産物の提供、市民や子どもの農業体験の場、みどりや景観の形成、生物多様性、災害防止、温暖化防止などの機能を高めます。生産緑地制度に伴う税負担を軽減します。市民・体験農園を広げ、直売への支援、農山漁村との共存を図ります。

 「2.地方再生」では、「開発利益の還元」「建築基本法」「条例による規制」など、都市計画の制度を意識した項目がみられる。「9.災害対策」でも、「未利用土地の買い上げによる公園整備」のようなことや「無電柱化」が位置づけられており、ある程度積極的な提案がなされているといえよう。

 このほか、まちづくりに関連するような内容として、以下のものがみられる。

再建5:地域
2.地方再生
○それぞれの地域特性に根ざして経済再生をはかろうとする「地産地消」 、「地域通貨」 、「福祉事業とワーカーズコレクティブ」 、 「コミュニティビジネス」 「リビング・ウェッジ(生活保障給) 」 、都市と農村をつなぐ施策などの自主的努力をバックアップします。
4.郵政民営化の抜本的見直し
○郵便局ネットワークをNPOや自治体と連携・協力し、高齢化社会や地域コミュニティの再生のための生活拠点、地域防災や災害時の拠点として活用します。
6.市民活動支援の促進
○地域や社会の担い手としてのNPO活動を推進するため、NPO法・NPO税制を抜本改革し、NPOを支援します。認定NPO法人の要件緩和や寄付金控除などの税制改革を実態に即して行います。
○安上がりの行政のための手段としてではなく、NPOをはじめとする市民の自主的・自発的な活動と、公共サービスの担い手である「公」との連帯と協働をすすめます。
○市民が自発的に出資した資金により、地域社会や福祉、環境保全のための活動を行うNPOや個人などに融資することを目的に設立された「市民の非営利バンク」(NPOバンク)を支援します。
○「協同労働の協同組合」の法制化をすすめます。
9.災害対策
○消防機関を地域に暮らす住民の安心の拠り所として、災害の未然防止から、発生した場合の即時対応、被災者の社会復帰や救済まで、総合的に情報やサ-ビスを提供する「地域安全安心センタ-」をめざして改革していきます。
再建8:税財政
2.金融
○地域社会や福祉、環境保全に貢献しているNPOバンクについては、貸金業法による厳しい財産要件や指定信用情報機関制度の登録、運営などの諸規制を緩和します。市民活動を支え、社会に貢献する金融NPOを育成・支援します。
○ 「地域再投資法」 (金融アセスメント法) を制定し、金融機関に中低所得者、女性、中小事業者・ベンチャービジネスなどに対する一定割合の融資を義務づけ、市民の監視と需要の創造などにより地域経済・社会の発展につなげます。

 地域単位での市民・住民活動の重視、それを支えるための拠点の整備と金融的な仕組みが示されている。支える部分に関して、郵便局や消防機関の活用や、NPOバンクや地域再投資法などの具体のアイデアを出しているところも興味深い。

 以上のように、基本的な制度部分の改正によって、まちのマネジメントは地域での活動に委ね、それを支えるための仕組みも準備するというある程度一貫した発想はみてとれるわけだが、それらがダイジェスト版には全く掲載されていないという部分をみると、ここは選挙の論点にはならないと考えているようである。確かに他の党でも同様のことは言っており、他党との差別化にはつながらないのであろう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Jun 24, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:共産党編

■共産党
 住宅政策編と同様に、「参議院選挙政策」、「政策の詳細(政策集)」、「各分野政策」の3種類についてみていく。

 「参議院選挙政策」の中には、都市計画に関連する事項はみられない。あえて挙げるならば、ダイジェスト版の「農業」の項に「都市農業、中山間の農地・集落維持への支援」との記述があるくらいである。

 「政策の詳細(政策集)」で、都市計画分野に関係する項目としては、以下が挙げられる。

3、日本経済の「根幹」にふさわしく、中小企業を本格的に支援します
(1)大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくります
○大型店の身勝手を許さないルールをつくり、商店街・小売店を活性化する
 大型店の出店等による影響を事前に調査する「大店・まちづくりアセスメント」を義務づけるとともに、「まちづくり3法」の抜本改正をすすめます。「フランチャイズ適正化法」を制定し、加盟店の自営業者としての営業と権利をまもります。
4、農林漁業の再生―――食料自給率の向上めざして農政を抜本的に転換します
(5)都市農業、中山間の農地・集落維持にたいする支援を強化します
 都市の農業は、都市住民にとって、新鮮な食料・農産物を消費者の食卓に供給するもっとも身近な存在です。都市計画に農業・農地を位置づけ、現に農業が営まれている農地の相続税・固定資産税は、農地課税・農地評価を基本とし、作業場なども農地に準じた課税とします。(後略)

 「まちづくり3法」の改正や、都市計画(法か)で農業・農地を位置づけるという、ある程度具体的な指摘がなされている。前者の話は公明党も位置づけており、後者の農地の話は自民党及び公明党も指摘していることであるから、この部分で共産党ならではの特徴がみられるというわけではない。

 「各分野政策」で都市計画分野に関連する内容としては、次のような項目がみられる(文章が長いため一部編集を行っている。なお、冒頭に数字が付いているのが「分野名」である)。

■4.農林漁業・食料
◎都市づくりに農業を位置づけ、農地税制を抜本的に改めます
・都市内の農業と農地の存続を否定する現行の都市計画制度を見直し、農業を都市づくりの大事な柱に位置づける。
・「都市農業振興法」(仮称)を制定し、直売所、地産地消、学童農園、体験農園などの取り組みを支援する。
・当面、生産緑地の要件を緩和し、相続税納税猶予の制度を維持し、市民農園や屋敷林などにも適用する。
■5.税制
◎社会情勢の変化に対応した税制改革をすすめます
・都市計画区域内農地への宅地並み課税の廃止をめざし、当面、生産緑地指定の要件を緩和し、追加指定を広げる。
■7.環境
◎ごみの“焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムを製造段階から確立します
・2009年に改正された土壌汚染対策法では、 3000平方メートル以上の土地を改変する場合に調査を義務づけることなどが盛り込まれたが、依然として、法改正以前に廃止された事業所には適用されないなど不十分なものになっている。操業中の工場敷地や、工場敷地を別の工場に売却した場合にも、調査を義務づけるよう改正すべきである。
◎大型開発による環境破壊をやめさせ、生物多様性をまもります
・広島県福山市の鞆(とも)の浦は、一部を埋め立てて橋を架ける計画に、地元住民が「歴史的な景観が破壊される」として、県知事の埋め立て免許差し止めを求めて提訴し、昨年10月、広島地裁は差し止める判決を出した。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関で世界遺産の選定について勧告している国際記念物遺跡会議(略称イコモス)のグスタボ・アローズ会長も昨年 11 月、埋め立て・架橋計画について「(歴史的な景観にとって)破壊的なことだ」と述べ、改めて計画の変更を求めた。差し止めに不服な広島県は控訴したが、貴重な景観を維持するためにも、こうした無謀な計画は、きっぱり中止すべきである。
■24.住宅・マンション
◎住宅の改善、住環境の保護
・都市再開発や土地区画整理事業などまちづくりへの住民参加をすすめ、「住民が主人公」のまちづくりを支援し、住環境や景観、コミュニティーを守り、改善する。それを目的・基本理念として、住民主体の計画づくりや許認可制度を軸にした「都市計画法」の改正や「建築基本法」の制定をめざす。
■25.防災・安全のまちづくり・過疎対策
◎災害に強いまちづくり、国土づくりをすすめます
・長周期地震動や地盤の液状化などへの対策を強化し、被害を最小に抑える取り組みをすすめる。
・災害対策を無視した開発行為の規制など、まちづくりそのものを、開発優先から、防災を重視した住民参加型に転換する。
・開発や土地利用の変更にあたって、災害に対してどのような影響があるかを事前にチェックする防災アセスメントを導入する。
◎過疎地における生活維持・地域活性化のための対策を強化します
・漁民や山村住民による流域の共同管理、棚田や森林の保護・育成、伝統文化の継承で、都市住民との交流・共同を広げる。

 農地の保全とそのための税制、過疎地の問題は他党とも共通するが、その他の項目は独自性が強い。「環境」での土壌汚染や歴史的景観の問題(編集は最小限にとどめて長めに引用している)、「住宅・マンション」及び「防災・安全のまちづくり」で示されている住民参加型の規制の発想などは、他の党のマニフェストでは指摘されていない事項といえる。

 このようにみれば、根底のところでは、現行の都市計画の発想や制度の大幅な方向転換を求めていると読むことができ、その点では昨年の民主党のものとも通じる部分があるが、方向性が明確に示されているとはいいがたい。おかしい部分は指摘しているのだが、ではどうするという点の主張は弱いようにもみえる。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Jun 23, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:公明党編

 民主党自民党に続いて、公明党の都市計画に関するマニフェストの内容をまとめる。
-----
■公明党
 住宅政策の場合と同様に、「マニフェスト2010(要約版)」≒「マニフェスト2010(完全版)」の前半(「主要4政策」と「重要政策」)と、「マニフェスト2010(完全版)」後半の「政策一覧(分野別)」の大きく2つに分けて、内容を整理する。

 「主要政策」「重要政策」の中で、都市計画に関して直接的に触れている項目はない。「重要政策」の農業に関連して、以下のような記述がみられるくらいである。

◎秩序ある農地利用の推進
○優良農地の保護と秩序ある土地利用を推進するために、境界の明確化と共有化を進め、更なる運用体制の充実を図ります。
◎都市農業の振興
○都市にあって多面的な機能を担う都市農業が持続可能なものとなるよう、都市農業振興法の制定を検討します。
○生産緑地における現行の相続税の納税猶予制度は維持します。
○都市近郊の市民による都市農園ニーズの高まりに対応するために、市民農園・農業体験農園の整備を推進します。

 「政策一覧(分野別)」で都市計画分野の課題を直接扱ったものとしては、以下の内容がみられる。

◎都市再生、コンパクトシティの推進
○都市基盤のインフラ整備や、地域の特性を生かしたソフト面の整備を支援します。また、優良な民間都市開発を支援するため、民間資金やノウハウを活用して都市再生・地域活性化関連施策を推進するとともに、政府系金融機関ならびに民間都市開発推進機構による資金繰り支援を実施し、事業の活性化を促します。
○医・職・住・遊など日常生活の諸機能を集約したコンパクトシティを推進し、歩いて暮らせる安心で快適な生活圏の形成と低炭素化を図ります。
○歩行者、自転車、自動車の安全な通行環境を確保するため、道路空間の再配分等により自転車専用の走行空間を新たに1,000路線で整備するともに、駐輪場の整備を図るなど快適な自転車利用の普及に努めます。
○市街地幹線道路、歴史的町並保全地区、観光地などの無電柱化事業に取り組みます。併せて沿道の植樹を進めます。
◎新たな交通総合システムを構築
○道路に対する国民ニーズの多様化を踏まえ、コンパクトなまちづくりを推進するとともに、自動車中心の道路の在り方を転換し、歩行者や自転車が安全・快適に通行できるよう、既存道路の歩行者専用道路への転換、トランジットモール(一般車両を制限して歩行者・自転車・公共交通機関に開放された道路)等の新しい専用道路概念の導入など生活に密着した人間重視の道路整備を推進します。
◎防災・減災対策を強化
○地球温暖化にともなう気候変動による集中豪雨や土砂災害、風水害、地震、津波・高潮、豪雪対策など防災・減災対策を推進、強化します。
○海抜ゼロメートル地帯等における海岸保全施設の老朽化・耐震化対策、中小河川の治水対策、土砂崩れ対策、緊急物資の輸送に資する臨海部防災拠点の整備を推進します。
○局地的集中豪雨(ゲリラ豪雨)などによる洪水予測の強化や情報伝達の迅速化を図るとともに、避難経路確保や緊急災害対策派遣隊を拡充・強化します。また、被災者生活再建支援法等、災害関連法制の一元的運用にむけた体制を構築します。
◎地域コミュニティーを担う商店街を応援
○地域コミュニティーの再生や地域経済の振興を図るため、中小小売商業振興法や地域商店街活性化法、中心市街地活性化法などの関係法制を抜本的に見直し、ソフト・ハード両面にわたる商店街ならびに中小小売商業者への総合的な支援の拡充を図ります。
○地域コミュニティーを担う中核的存在である商店街支援のため、低炭素社会や安心・安全、少子高齢化などの地域社会の課題に対応する商店街の取り組みを支援する中小商業再生事業予算の確保と増額を図ります。
○空き店舗対策などの商店街整備事業に取り組む商店街振興組合等に土地を譲渡した場合の特別控除の適用要件の緩和を図ります。
○空き店舗を活用した地域物産展の開催や子育て支援施設の設置をはじめとした地域住民に役立つ取り組みの支援など、商店街を地域コミュニティーの顔として住民が憩える場所に再生します。

 昨年と同様に、、「都市再生」「コンパクトシティ」「安全安心」「商店街活性化」などの今日的なテーマが並んでいる。書かれている内容も、民主党自民党に比べればより具体的ではあるが、すでに取り組まれているものの記述が中心で、今後どのようにしていくかという新しい方向性が出ているというわけではない。

 一方で、地域や住民・市民による「まちづくり」に関連しそうな内容としては、次のようなものが挙げられる。

◎NPO支援
○NPO法を改正し、NPOなどの非営利セクターに対する支援税制の認定要件緩和、寄付金控除制度を充実させます。
◎地域における社会的活動の支援
○少子高齢化、医療、環境問題など社会的課題をボランティアではなくビジネスで解決する活動(社会的企業)は、雇用機会の提供、地域の活性化、新たな働き方の提示等の大きな潜在力を持つ今後育成されるべき分野と位置付け、以下の取り組みを推進します。
・社会的企業の認知度を高めるためのキャンペーン活動の展開など、社会的企業の普及、啓発の推進
・収益性が高くない活動を支えるための、金融機関からの資金調達の円滑化
・大学等に専門的な教育プログラムを構築することを促すなど、社会的企業を担う人材を育成
・社会的企業の多くを占めるNPO法人による中小企業施策の活用拡大
・資金調達等を容易にするなど、国や地方自治体による社会的企業の信用力補完制度の創設
◎定住自立圏構想等の推進
○地方への人口定住を促進するため、中心市と周辺市町村が協定に基づき相互に連携する「定住自立圏構想」により圏域ごとに生活に必要な機能を確保するとともに、都市から地方への移住・交流を促進します。

 地域を重視した取り組みの推進という点では、自民党や、昨年の民主党の「政策集」とも共通する視点だといえよう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Jun 22, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:自民党編

 先の民主党編に続いて、自民党に関して。なお、昨年と同様に、交通関係については扱わないものとしている。
-----
■自民党
 住宅政策でも書いたように、 総論の「政策パンフレット」と、各論の「政策集J-ファイル2010」の2種類がある。
 政策パンフレットの中で、都市計画に関して直接触れられている項目は、みあたらない。交通に関して「総合的な交通体系を整備」とあるくらいである。この点は、昨年の「政策集」と同様。

 「政策集J-ファイル2010」で、都市計画やまちづくりという言葉が使われている項目は、以下のものである。

75.都市農業の保全
 子どもからお年寄りまで、都市に住む方々に新鮮で安全な食料と快適な生活環境を提供している都市農業の継続と農地保全が図られるよう、今後の都市計画制度見直しの中で法律、税制などの整備と振興施策を充実します。
129.観光立国の実現
 ビジット・ジャパン・キャンペーンの高度化や入国審査の円滑化により「観光立国」を実現します。また、無電柱化の集中実施や景観に配慮したまちづくりなどによる魅力有る観光地の整備、休暇の取得・分散化、観光産業の育成により、観光を通じた地域活性化を進めます。(後略)
152.「世界一安全な国をつくる8つの宣言」による治安対策の強化
 平成20年に策定した「世界一安全な国をつくる8つの宣言」により、犯罪に強いまちづくりの推進、振り込め詐欺の撲滅、生活の安全・安心を脅かす事案への対応、凶悪犯罪への対応、サイバー空間の安全確保、組織犯罪対策の推進、銃器・薬物乱用対策の推進、テロ対策の推進、不法滞在者対策の推進、客観的証拠の収集法法の整備、死因究明体制の強化等を推進します。また、次期国会にて「地域住民等による安全で安心して暮らせるまちづくりの推進に関する法律案」を成立させ、住民パトロールなどの治安対策に邁進している方々を支援します。
177.豊かな自然環境を取り戻す仕組みづくり
 (前略)今後のわが国の街づくり・インフラ整備・地域開発においては、人口減少時代を踏まえつつ、より環境に配慮した取組みが求められます。コンパクトで人や環境に優しいまちづくり、地域づくりを進めるとともに、市街地を取り巻く鎮守の森や里山を復活・活性化させ、生物多様性の確保等を行います。これらにより、都市機能と豊かな自然環境が共存する21世紀型の持続可能な都市・生活空間をつくります。

 言葉は用いられているが、主眼は農業や観光、安全や環境の話であり、そのものを直接論じているわけではない。現在進行中の都市計画制度の見直しの動きは、75で若干意識されている様子もみられるが、それ自体は論点とはされていないようである。

 その他、都市計画に関連するとみられるものとしては、以下のような内容がみられる。

8.不断の規制改革と「グローバルトップ特別区」の創設
(中略)さらに、医療研究、サステナブル都市、国際コンテンツ拠点、自治体による国内外の企業や研究施設の誘致促進を可能とするため、財政上の措置を含め「グローバルトップ特別区」を創設します。
120.防災・災害対策
 防災ニューディール(学校・住宅地・公共施設等の耐震工事)や駅等のバリアフリーの推進・ホームドアの設置等、命を守る基盤を整備します。近年の集中豪雨の増加など自然環境の変化も考慮しつつ、大規模な地震や津波、水害・土砂災害等に備え、防災・減災対策、地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備促進を進めます(後略)。
136.地域力の創造
 (前略)このような観点から、地域医療、公共交通、産業振興など、地域の様々な政策課題について、「集約とネットワーク」の考え方により、中心市と周辺市町村の相互連携を強化する定住自立圏構想を推進します。全国の中心市を核として圏域の形成を促進するとともに、重点投資により内需を振興し、圏域全体の経済を活性化していきます。
145.商店街の活性化
 地域住民から商店街に寄せられる「地域コミュニティの担い手」としての期待はこれまで以上に高まっている中、経営指導や商店街で起業・新業態開発への研修等のエンジェル税制を活用しての空き店舗の有効利用や公共交通機関と連携したアーケードや駐車場・駐輪場の整備、省エネ型街路灯の設置等、商店街再生に向けた意欲的な取り組みに対するソフト・ハード両面での支援を行い、高齢化や安全安心、環境等の社会課題へ配慮した街づくりと一体となった“身近で快適な”商店街づくりを進めます。駅前や中心市街地等の賑わいを取り戻すことによって、地域経済の再生だけでなく、地域のつながりを高めます。

 8や120にみられるように、他の提案でも妙に新しい言葉が使われているほか、多数の項目が並列的に述べられていて、文章として(=政策として)若干こなれていない印象も受ける。また、全体に「地域」を重視したような書き方が目立つ。これは昨年のにもみられたことだが、昨年以上に具体的なことが書かれているようである(とはいえ用語レベルであるが)。

 同様の傾向は、以下の関連項目にもみることが出来よう。

64.農林水産業の多面的機能を評価した「日本型直接支払い」の創設
(前略)また、地域やNPOなどが参加して農業、加工、介護など「地域社会を維持する事業」に取り組む地域マネジメント法人の育成を推進します。
107.地域におけるICT利活用の促進
 (前略)地域コミュニティにICT関連技術を集中的に投資して、高齢者や児童の見守り、防災情報の配信などを実施し、役立つ先進的な情報通信システムの構築、さらにそのシステムの運用のための地域における体制づくりを支援します。
138.地域を支える人材の創出
 個性豊かで誇りある地域づくりに向けて、歴史文化や気候風土といった地域資源を活かしていくのは人材の力です。地域の発想による独自の取組みによって魅力ある地域に生まれ変われるよう、地方交付税等による財政支援に加えて、民間アドバイザー派遣等の人材支援を推進します。元気なまちづくりに挑むあらゆる人材の能力を高めるため、相互交流や知識・ノウハウ習得を促進し、地域の人材力の向上を応援します。
144.地域コミュニティの連帯と再生
 弱体化した地域の絆を再生するため、町内会や自治会など地域に根ざした活動を行う団体を支援する「コミュニティ活動基本法」を制定します。また、地域や社会に貢献する活動をポイント制で評価する仕組み(有徳ポイント制度)を創ります。
147.地域で活動する団体やNPO法人の育成・支援
 「特定非営利活動法人法」(NPO法)の改正、認定NPO法人制度の大幅拡充・簡素化によって、誰もが参加しやすい社会活動・NPO法人などボランティア組織の育成・支援策に取り組みます。

 昨年のものについて書いた、「基本的には地方への分権を進め、また地域の活動を支援することで、『地域レベル』での取り組みを促す、『地域レベル』にまかせるということ」、という傾向が、さらに強まっているようにもみえる。

 全体にみれば、昨年の衆院選の際の内容とほぼ同じで、野党となったこともあって、ある程度思い切った言葉も使えるようになったというのが印象である。その意味で個人的な感想も昨年と同様であり、都市計画への関心の薄さ、都市計画の仕組みに関するビジョンの欠如、というものを感じざるを得ない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Jun 18, 2010

都市計画の観点から2010マニフェストを読む:民主党編

 引き続いて、「民主党の政権政策 Manifesto2010」を、都市計画的な観点から読んでみる。
-----
■民主党
 5ページの「強い経済」という項には、都市政策に関する項目が一つ立てられており、また観光の項に「まちづくり」という言葉がみられる。

○総合特区・都市政策
規制改革、税制の特例、事後的サポート体制の整備など必要な政策を複合的・集中的に実施する総合特区を展開し、地域を再生します。
首都圏などの大都市の活性化をめざし 「大都市圏戦略基本法」 (仮称) の制定などを進めます。
○観光
訪日観光客3000万人の実現に向けた観光情報の戦略的発信、ビザ要件緩和などを進めます。むら・まちづくりと一体の多様な観光資源を活かした魅力ある観光地づくりや「ローカル・ホリデー制度」 創設などを進めます。

 都市政策は特区と大都市が対象、まちづくりはローカルな観光地という感じで、政策対象の地域を限定的に捉えているようにもみえる。

 個別の政策項目であるが、都市計画関係に触れているものは見あたらない。関連するものとしては、「地域主権」での分権関係の話と、「交通政策・公共事業」のあたりだろうか。

9.地域主権
地方が自由に使える 「一括交付金」 の第一段階として、2011年度に公共事業をはじめとする投資への補助金を一括交付金化します。引き続き、さらなる一括交付金化を検討します。
より質の高い住民サービスが確保できるよう、福祉事務所の設置や公園に関する基準などは、身近な自治体が決められるようにします。
10.交通政策・公共事業
社会資本の維持・更新などを着実かつ戦略的に進めていくため、民間の資金、経営能力、技術的能力を活用した仕組み・手法を積極的に取り入れます。

 ここでも住宅政策の場合と同じように、昨年のものよりも情報量・具体性ともに低下している。昨年のマニフェストで書かれた「建築基準法などの関連法令の抜本的見直し」、具体的には「政策集INDEX09」で書かれていた「まちづくり法」につながるような発想も、全くみえてこない。

 一方で、19ページからの【実現したこと】の中では、都市計画に関連するものは一つもみあたらない。あえて挙げるとすれば、まちづくりに関連してくる以下の事項であろうか。

39.NPO税制の見直し
2010年度税制改正でNPOなどに関する寄付金税制の適用範囲を拡大するとともに、2011年度改正では税額控除方式を導入する方針を決定しました。

 このようにみれば、今回の選挙では都市計画・まちづくり系の話はやはり意識されておらず、またこの1年の政策の中でもあまり重視されてこなかったということが出来よう。もちろん2009年のマニフェストの発想は現時点でも活きているとは思うのだが、少なくとも明記されていないという点において、都市計画サイドの立場としては少々残念にも思える。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

Aug 18, 2009

都市計画の観点からマニフェストを読む:比較考察編

 一連の党別の整理を踏まえて、比較考察をしたい…ところなのであるが、先の住宅政策の場合とは異なり、残念ながら比較表がつくれるほどの内容は掲載されていない。
 それでも、一定の記述がみられた、自民党・公明党・民主党の特徴をまとめれば、次のようになるだろうか。
  • 自民党: 現行制度はそのまま、地域が取り組みやすい環境を整備。
  • 公明党: 地域で実践中の取り組みを、事業制度や補助等で支援。
  • 民主党: 現行制度を抜本改正し、地域主権の都市計画を実現。
 自民党のマニフェストには記載があまりないので(ということは現行のままでよいということか)判断がつきにくいが、公明党は個別の実践レベルを推進、民主党は仕組みそのものを改変、という点が大きく違うといえよう。とはいえ、公明・民主どちらの場合も、都市計画に主体的に取り組むのは自治体であり地域であるという部分は、基本的には共通しているようにみえる。

 両者の特徴をこのように捉えた上で考察すれば、公明党の場合には、地方分権も合わせて主張しているから、個々の地域で先進的な活動に取り組んでいる自治体にとっては、ある程度やりやすい環境になるのかもしれない。権利が与えられて、かつ国が活動を後押ししているのであるから。
 しかし、このような場合には、意識の高い自治体は積極的に取り組むが、意識の低い自治体は動かないという状況も生じかねないのではないか。となれば、都市間の格差はある意味で広がることになろう。元気な自治体のまちは良いものとなるが、元気がない自治体のまちは衰退するという状況も考えられる。
 そうなった時には、広域的な観点からどのような都市計画的な対応を行うか、ということも問われることになろう。衰退するまちはそれでも仕方がない、元気なところへ重点的に支援するという姿勢をとり続けるのであれば、結果的にマニフェストで主張している「コンパクトシティ」が実現する、ということなのかもしれないが。

 一方、民主党の場合には、「抜本改正」される制度がどのようなものであるのか想像がつかないため、先の状況は考えにくい。しかし、複数の法を整理統合して体系そのものを変えるのであるから、その作業には大変な労力が必要と思われ、また時間もかかるものと想定される。仮に官僚がその方向性に反対した場合でも、それだけのことをやれるだけの能力・力量があるのかが、問われることになろう。中途半端なやり方をした場合には、現行制度よりも混乱する危険性も想定されるのであるから。
 また、制度が抜本された場合に、これまでの体系に慣れていた現場レベルの自治体職員や専門家、企業などがどれだけ対応しうるかも問題であろう。制度が変更されるまでに数年、それを現場レベルで理解するのに数年、きちんと使いこなせるようになるまでさらに数年…などとなると、かなりの混乱も生じそうであり、またこの先しばらくは都市計画が「動かない」可能性も考えられるのではないか。
 そのあたり、継続的に動かしつつ、適切な形で抜本的に改正し、その成果が現場レベルでも活用出来るようにする、というのは、かなりの難題になりそうである。

 現在政府では都市計画法の抜本的(と言われる)改正に向けた作業を行っているわけだが、各政党のマニフェストをみると、政権政党がどこになるかで、上記改正の方向性も大きく変わりそうである。今回の改正は数十年に一度の大きなものと言われ、これまでの方向性が大きく転換されるとも言われている。
 そのようなタイミングで政権交代が起こるかもしれないのであり、結果如何でそれこそ今後の都市計画のあり方が左右されることにもなろう。8月30日にどのような選択がなされ、その結果として都市計画はどこに向かうのか、注目していきたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

都市計画の観点からマニフェストを読む:その他政党編

 政党別の最後として、自民・公明・民主以外の、その他の政党をまとめて。
-----
■共産党
 「総選挙政策」の中で、都市計画に関連するものとしては、次の事項くらいである。

○都市農業、中山間地農業にたいする支援を強化します(23ページ)
 都市の環境に果たす農地の役割と農業への参加の意欲に応えるため、都市計画制度での位置づけを強化し、農地への相続税・固定資産税を、維持可能な水準に引き下げます。当面、生産緑地の指定を拡大し、相続税猶予の条件を緩和します。期限切れとなる条件不利な中山間地農業への直接支払い制度を継続し、指定の条件を緩和します。

 残念ながらこれだけであり、かつ農地の話であって本質ではない。これでは考察することも出来ない。

-----
■社民党
 「マニフェスト」の内容で、関係あるものを(若干無理矢理)挙げても、この程度である。都市計画はほとんど忘れられているかのようである。

再建5 地域  元気でゆたかな地域へ
6.地域のバス・鉄道などの公共交通への支援を充実します。
再建7 みどり  地球温暖化ストップ
9.すべての開発に対し、生物多様性の保全を義務づけます。水基本法を制定します。
10.情報公開や住民参加の徹底で、無駄なダムや道路などの公共事業を徹底的に見直し、乱開発を見直します。

-----
■国民新党
 「政権政策」から関係あるものを(若干無理矢理)挙げても、この程度に過ぎない。

7.地方再生
真に必要な公共投資や災害対策を早急に復活し、安心安全な地域づくりを進めます。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

都市計画の観点からマニフェストを読む:民主党編

 自民党・公明党に引き続き、今度は民主党について。
-----
■民主党
 「マニフェスト」の政策各論の項で、都市計画に関連するものとしては、以下の内容が挙げられる。

44.環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する
○住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する。
・建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化等、必要な予算を地方自治体に一括交付する。
48.災害や犯罪から国民を守る
・大規模災害時等の被災者の迅速救済・被害拡大防止・都市機能維持のために、危機管理庁(仮称)を設置するなど危機管理体制を強化する。

 どちらも直接は関係しないが、「建築基準法などの関連法令の抜本的見直し」には、後述するように都市計画法なども含まれており、ここが都市計画的な観点からはポイントといえよう。
 また、まちづくりに関連する事項としては、

34.市民が公益を担う社会を実現する
○特定非営利活動法人をはじめとする非営利セクター(NPOセクター)の活動を支援する。
・認定NPO法人制度を見直し、寄付税制を拡充するとともに、認定手続きの簡素化・審査期間の短縮などを行う。

という内容もみられる。NPOの話は自民党・公明党でもみられたが、「市民が公益を担う社会」と書くあたりが、この党の独自性といえるだろうか。

 「政策集」には多数の項目が挙がっているが、その中で都市計画やまちづくりに関連が深いと思われる事項を挙げてみる。

○災害対策(2ページ)
 被害を減らすため、既存不適格住宅の耐震改修を進めます。さらにゲリラ豪雨や都市における河川氾濫など、新しいタイプの災害への対策を強化します。
○地域主権の確立(7ページ)
 大都市制度のあり方を検討する一方で、住民と行政との距離を縮めるため、政令指定都市の区や合併前の市町村などを単位とし、一定の権限を持った自治区を設けられるようにします。
○住民自らによるガバナンス形態の決定(8ページ)
 地域のことを地域で決める地域主権を確立するため、法律等の画一的な縛りを極力撤廃して、シティマネージャー制度の導入、地方議会定数や地方議会議員の任期の変更など、地方が独自の判断で自治体や議会の仕組みを決められるようにします。
○コミュニティの再生・強化(13ページ)
 住民が単に公的サービスの受け手となるだけでなく、公共サービスの提供者・立案者といった自治の担い手として参画する社会を目指します。特に、地域で行われている高齢者宅の見回りなど、地域住民同士が互助互恵の精神で行う奉仕活動を促進し、過疎地などのコミュニティを再生・強化します。
○登記所の地図整備を推進(14ページ)
 地図整備についての国の責任を明確にし、筆界特定手続きの職権開始制度の導入など正確な登記所備付地図の整備を加速します。
○農地制度の改革(35ページ)
 農地について、一筆毎に規制する方式からゾーニング規制(地域別規制)の方式を基本とする制度に転換します。さらに、地域住民参加型による農業的土地利用(農業振興地域整備法)と非農業的土地利用(都市計画法)とを一体化した総合的な「都市・農村地域土地利用計画制度(仮称)」を創設します。
○中心市街地・商店街の活性化(38ページ)
 地域コミュニティ再生のため、商店街の活性化を支援します。1階に商店街、2階以上を高齢者向けケア付き賃貸住宅とする複合建築物の建設などにより、「商住一体のまちづくり」を進めます。託児所や駐車場・駐輪場等を整備し、消費者が気軽に商店街に出かけられる環境を整備します。起業家のためのSOHO(在宅勤務の小規模オフィス)への活用や行政窓口設置により、空き店舗や空き地の利用を進めます。後継者不足に苦しむ商店街の新たな担い手育成を支援します。
 都市景観の向上、防災施設や情報通信基盤の整備、電線の地中化等を促進し、バリアフリーで美しい商店街をつくります。
○地方の特性を生かした国土政策(39ページ)
 農山漁村は、超高齢化と若年労働者の流出が進み、過疎化による地域コミュニティの崩壊や農地・林地などの国土荒廃が進行しています。水源確保や土砂流出防止などの国土環境の保全機能、伝統文化や自然との共生等の文化・レジャー機能の充実など、多種多様な機能を生かすための支援策を展開します。
 都市部では、密集市街地の形成や交通渋滞の発生など負の遺産が解消されていません。中心市街地の空洞化問題への対策、一極集中下での大規模地震など激甚災害のリスクの解消を重点とします。
○地域活性化に立脚した観光政策(40ページ)
 総合的な交通体系と景観に配慮した街や交通施設の整備を進め、国内外からの観光客の視点に立った観光政策を推進します。
○人にやさしい地域主権のまちづくり(40ページ)
 これからは画一的なまちづくりではなく、自治体への大幅な権限と財源の移譲を前提に、それぞれの基礎自治体が街の特性を活かしたまちづくりを推進できるようにします。
 道路や施設などインフラ整備のハードづくりと、土地の名産品や祭りなどコミュニティを盛り上げるソフトづくりを最適に組み合わせ、住民・NPO参加による行政等の運営を行い、「人の温かさが感じられるまちづくり」を進めます。
 新たな発展を続ける大都市と、商店街の空洞化や人口の過疎化、社会基盤整備の衰退などに直面する地域との格差拡大の解消に努めます。
 現在の法体系を抜本的に見直し、建築基準法を単体規制に特化、大胆な地方分権を前提として都市計画法をあまねくすべての地域を対象とする「まちづくり法」に再編、景観・まちづくりの基本原則を明記した「景観・まちづくり基本法」を制定することなどにより、コミュニティと美しく活気あるまちの再生・保全を図ります。
○高齢化など社会環境に対応したまちづくり(40ページ)
 高齢化社会、人口減少社会等に配慮したまちづくりを進めます。移動制約者の自立と社会参加の促進のため、引き続きバリアフリー社会の実現を目指します。
○交通基本法の制定(41ページ)
 「交通基本法」を制定し、国民の「移動の権利」を保障し、新時代にふさわしい総合交通体系を確立します。その内容は、…④都道府県・市町村が策定する地域交通計画によって地域住民のニーズに合致した次世代型路面電車システム(LRT)やコミュニティバスなどの整備を推進する――等です。
○環境影響評価(環境アセスメント)制度の拡充(45ページ)
 環境アセスメント法を改正し、対象事業の範囲の拡大・評価項目の追加、情報公開と市民参加の機会の拡充などを実現します。また、自治体による市民参加の機会の拡充を支援します。全事業に対する国レベルでの戦略的環境アセスメント制度(SEA)の導入をめざします。
○循環と共生のまちづくり(49ページ)
 環境負荷の少ない持続可能な社会を目指すための原則を明記するとともに、情報公開と市民参加を徹底した地域主権型のまちづくりのシステムを、都市計画法や建築基準法を抜本改正することによって構築します。また、省エネルギーのための屋上緑化と美しい都市景観をつくる「都市緑化法(仮称)」の検討を進めます。

 と大変盛りだくさんなのだが、どこかで読んだことのあるような文章にも見えてくる。住宅政策のまとめでも感じたことだが、近年にこの分野の研究者が主張してきたことに大変近いのである。民主党の政策をまとめるにあたっては、ブレーンとなった研究者がいるか、あるいは研究者の書いたものを整理したのか、どちらかではないかとも思えてくる。研究者的な文章という意味では、現在自治体が取り組んでいる内容を並べたかのような公明党のものと比べると、読んでいて分かりやすいし、論理が通っているようにもみえる。
 ただし、随所で「抜本的」と書かれているように、現在の制度をかなり大幅に変えることが主張されており、これが本当に実現出来るかどうか、またこの提案のように改正して本当にうまくいくのかは、注意深く検討される必要があるだろう。法制度の部分だけをみても、現在の「建築基準法」「都市計画法」「農業振興地域整備法」を“ガラガラポン”して、「新建築基準法(単体のみ)」に、「まちづくり法」と「景観・まちづくり基本法」、「都市緑化法」と「都市・農村地域土地利用計画制度」にするというが、いったいどのような形になるのかは見当もつかない。

 個人的には、この提案内容には若干疑問を抱かざるを得ない。最大の疑問は、このような制度を、「まちづくり」という言葉で受けてよいのかということ。まちづくりはむしろ空間=ハード以外の、行動=ソフトも含む概念であるから、空間を対象とする法制度には、この言葉を使うべきではないのではないか。都市と農村を一体的に扱うというならば、「都市・農村計画法」とかでよいはずである。その意味では、「景観・まちづくり基本法」にも違和感を感じる。景観は基本的には空間の話だからである。
 逆に、もしもこの法律の中に、ソフトも含む広義の「まちづくり」も含めてしまおうとしているのならば、それについても違和感がある。今やまちづくりは「都市計画」という範疇を超えた大きな概念なのであって、それを都市計画的なものの中に“回収”してしまおうとするのは、どこかおかしいのではないか。

 などということを考えてみても、総論として主張していることはわかるが、各論としては疑問も持ってしまう部分が多い。まあ、自民党や公明党のように、(都市計画に関する)総論がみえにくいものよりは良いとは思うが。

| | Comments (0) | TrackBack (0)