台湾の実態から被災マンション復興を考える
台湾の被災マンション(区分所有集合住宅)の復興を扱った論文「区分所有集合住宅の再建事例にみる復興支援策の効果-台湾・集集地震における被災集合住宅の再建 その2」が、学会誌に掲載された(PDFファイルはこちら)。復興支援策の全体像をまとめた第1報(PDFはこちら)、支援策の個別事例への影響をみたこの第2報、そして台湾と神戸・阪神大震災の復興支援策を比較検討した英語論文(PDFはこちら)と、3本の論文を出すことができ、これでようやく台湾の震災復興研究が一段落した形である。
思い返してみれば、初めて現地に行ったのが震災後2年半経った2002年で、その後2006年までの間に計5回訪れていろいろな人に話を聞いて回った成果が、これらの論文となった。当初は現地の事情が全く分からなかったが、通っているうちに徐々に状況がつかめてきて、ポイントがなんとなくみえていった。言葉も全く分からなかったわけだが、優秀な通訳兼コーディネーターに助けられるうちに、基本的かつ重要な単語くらいは分かってきて、現地の文章もおおよそ内容が理解出来るくらいにはなった(その点漢字というのは便利である)。
これが初めての海外研究だったわけだが、この経験があったからこそ、その後日本・台湾・韓国のまちづくり比較研究なるものもはじめられたし、アメリカの都市計画調査もそれほど不安を持たずに参加することが出来た。そういう意味で、私にとって一つのターニングポイントとなった研究であり、その成果を震災10周年のこの年までにまとめて公表出来たことは、大変感慨深いものがある。
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ちなみに、この論文の最後は、次のような形でまとめられている。
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これより被災集合住宅の再建支援では、体系的な支援策を出来るだけ早い段階で提示すること、最大の問題である資金面での支援を行うことが重要であり、後者については適切なスキームの構築が求められる。さらには、所有者が個別に転居し生活を再建していく中で、従前所有者が共同で再建を行うことの意味や、これを重点的に支援することの意義を、改めて検討する必要があるといえる。
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改めてまとめれば、一点目は、復興の支援策はとにかく早い段階で体系的に示されるべき、ということである。台湾では、強力な支援策が組まれたものの、その提示が遅れたために、個々人が個別に生活及び住宅の再建を行ってしまったことで、マンション再建が進まなかったという側面がある。つまり、支援策は「後出し」ではダメなわけで、最初に一気に全体的なものを示すことが重要ではないか、と考えている。そういう意味では、震災がまだ起きていない今のうちに、起きた時の支援策のフレームを検討し、提示しておくことが必要だと思うのだが。そうすれば、非常時に何をすべきか/何が出来るかをあらかじめ考えておくことが出来るわけで。
二点目は、資金面の問題への対処が必要だということ。台湾では、建物が再建されるまでのつなぎ融資と、不参加者分の権利買取費用の費用拠出を行っており、これが大きな効果を挙げている。日本の場合には、低利融資という形が主に取られたわけだが、それに加えてこのような資金問題を完成後に“延期”する施策が有効ではと思う。台湾の場合、義捐金を元にした基金だったので可能だったが、日本でこういうことをどう行なえるのか、こちらについても平常時から考えておく必要があるのではないか。
最後は、むしろ再建しなくてもよいのではないか?という、逆説的な意見である。先にも書いたように、台湾では個々人が個別に住宅を確保するなどした結果、マンション再建の際に参加する居住者は少ない割合となってしまった。こういう元の建物の居住者の半数以下しか戻ってこない再建事業を、果たして「建替え」と呼んでよいのかどうか。それよりも、居住者の一部が残って同じ場所に「新築」したと考える方が、物事がスムーズになるようにも思えるのである。今の日本の仕組みは、あくまでも「建替え」を前提として組まれているが、これを逆の視点からみて、前の居住者による「新築」として考えた方が、よいのではということである。これも視点の大幅な変更を伴うから、震災が起きる前からじっくり考えておく必要があろう。
などと考えると、神戸では被災後15年、台湾では被災後10年を迎え、時間が経って問題を全体的に客観的に捉えられる今だからこそ、将来起こりうる都市部の大震災を踏まえた上で、再建のあり方を考え始めなければならないのではないか。…と思うのだが、研究者や行政官というのは、目の前で起きている問題には飛びつくが、それを後からじっくり検証したりする視点には欠ける部分があるので、なかなかこういう動きは起きないのである。次の地震が起きてからでは、遅すぎるのだけれども。













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